プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ドイツ空軍、ロシアに通信傍受される-そして公表される意味

 3月1日、ロシア国営テレビ「RT」は、ドイツ空軍トップ(空軍総監)の参加するオンライン会議の傍受音声(38分間)と、それを文字起こししたテキストをネット投稿した。

 翌3月2日、ドイツ国防省はドイツ公共放送「ARD」に対し、その傍受内容は本物だと認めた。

(⇒ 読売新聞 2023年3月3日記事:ドイツ軍の機密会議、ロシアが傍受し国営放送が暴露…イギリス軍要員のウクライナでの活動にも言及)

 いやはや、これはオオゴトである。

 私はドイツ軍の通信事情に詳しいわけでも普段から関心があるわけでも全くないが、漠然と――

 軍の通信ともなれば、軍の専用回線で行なっているものだと「当然」思っていた。

 しかしどうやらそうじゃないようで、このオンライン会議は「民間のウェブ会議システム」を使っていたらしい。

 それがzoomなのかマイクロソフトTeamsなのか知らないが、まるきり民間企業レベルである。

 私はこれまた漠然と、現代ドイツ軍と言えばアメリカ軍に次ぐ世界最先端軍隊だとイメージしているのだが、それでも「空軍総監が参加する戦時ウクライナ情勢についての高級将校会議」で使っているのは、あなたや私が使っているのと似たような(あるいは全く同じ?)ウェブ会議システムらしい。

 想像するに、ドイツ軍にはこんな会議で使うべき「軍専用回線」なんてものはないのだろう。

 たぶん、それを整備する予算が付かないのだろう。

 というのも近年のドイツ軍にはこれと似たような「実績」があり、2017年には保有潜水艦の稼働数がゼロに陥ったことがあるのだ。

 この原因もやはり、予算不足でスペアパーツが確保できなかったというトホホなものであった。

(⇒ 2017年11月8日記事:ドイツ潜水艦隊(Uボート)の惨状と「在庫を持たない」方式の危険)


 どうも我々は、ウクライナ戦争開戦前のロシア軍も過大評価していたのかもしれないが、ドイツ軍というものに対してもまた、「強い」イメージを過大評価しているのかもしれない。

 これは、もしNATO軍がロシア軍と戦争状態に入った場合、ものすごい不安材料ではあるまいか。

 NATO軍の中核たるドイツ軍が実はこの体たらく、ということになれば、まさに寒心に堪えないというものだ。

 しかしこれは、他山の石でもある。

 わが国の自衛隊もまた、潜水艦の稼働隻数ゼロということはないにしても、その通信網が盤石かと言えば絶対にそんなことはない気がする……


 さて、それはともかく注目すべきは、ロシア国営通信がわざわざ「傍受したこと・傍受した内容」をわざわざネット投稿して拡散したことである。

 いったいなぜ、そんなことをするのだろう。

 黙っておけばこれからも情報は採れただろうに、これからもドイツ軍は民間ウェブ会議システムで機密情報を喋ってくれたろうに、

 あるいは「ネズミは誰だ、スパイは誰だ」と騒がれることもなかったろうに……

 それでも自ら傍受の事実を暴露するというのは、はたして自慢・威嚇の類だろうか。

 これも想像に過ぎないが、もしかしたらロシアの潜入スパイ・買収スパイの誰かが、人知れず捕まった(又は何かの事情で死んだか使えなくなった)のではなかろうか。

 もっとも私だったら、たとえそうでも「実は我々、ずっと傍受してました」なんてことを公表はしない。

 そんなこと言いふらして自分が得するようなことは、あまり考えられないからである。

 いったいロシアは何を意図しているのやら……

 と思うのだが、皆さんはどう思われるだろうか。