6月24日、ロシア側で戦っていた民間軍事会社「ワグネル」総帥のプリゴジン氏は、「正義の行進」と題してロシアのプーチン政権に反旗を翻した。
イギリス国防省の分析によると、ボロネジを経て首都モスクワを目指すのは確実とされ――
既にロシア南部ロストフ州の州都ロストフナドヌーの、ロシア軍司令部をほぼ占拠したとも言われる。
かつロシア正規軍も、続々とワグネル軍に合流または進撃を黙認しているとも言われる。
まさに風雲急を告げる、急転直下の状況の激変――これを重大局面と言わずして何と言おう。
もっとも、ワグネル軍の武器・兵力は限られており……
かつロシア史において、プガチョフの乱をはじめとして、反乱軍側が政権側に勝った例はあまりない。
とはいえワグネル軍も、それなりの成算があるからこそ、モスクワ進軍なんていう他国軍には決してできない大冒険をしようとしているのだろう。
そしてもし、この反乱が成功したとしたら――
これはもう、世界史的な大事件になる。
なにせワグネルは昔で言う傭兵隊、プリゴジン氏は傭兵隊長である。
その傭兵軍が核兵器を大量に持つ大国を、武力で奪う。
古代・中世ならいざ知らず、こんなことが21世紀に起こるとは誰が予想したろうか。
今回のロシア・ウクライナ戦争の様子は、まるで第二次大戦の地上戦に戻ったようだと言われるが――
まさか展開が古代・中世にまで戻るだなんて、誰が予想したろうか。
そしてロシア軍というのは、どこまでボロボロなのか。
ウクライナ戦争前のロシアは日本で「おそロシア」などと言われていたが、これでは「ボロボロシア」と言われても仕方ないではないか。
もしワグネルがモスクワを占拠しプーチンが失脚するとすれば、それは史上初めて核大国(の政権側)が内乱で打倒されたことを意味する。
これは中国や北朝鮮の指導部にとって、まさにヒヤヒヤものだろう。
だがしかしこのことは、世界にとって望外の福音と言うべきだろうか。
何と言ってもプリゴジン氏は傭兵隊長、もう見るからに武闘派の面構えである(笑)
その武闘派の傭兵隊長であり軍事会社の総帥が、大量の核兵器を手にするのだ。
それはまぁ今のプーチンだって「元KGB局員の独裁大統領」だが、それが「現役傭兵隊長の独裁大統領」に交代するのは、世界にとってより脅威とは言えまいか。
もっとも昔の日本でも、バリバリの戦国武将だった徳川家康が天下を取って延々260年の太平を開いたという例はあるが……
私には見た目だけでも、政権奪取に成功したプリゴジン氏がそんな風になるとはとても思えないのだ。
さてこのワグネルの乱、数か月も経たないうちに結果が出ているはずである。
まるでかつてのヒトラー対スターリンのように、どっちが勝ってもロクでもないことになるような気がしてならないが……
「核があっても内乱で滅びる」政権の例ができるというのは、世界史において極めて重要なことだと思わずにいられないのである。