3月21日、日本の岸田首相はインドからポーランドへ飛び、そこから陸路(鉄路)でウクライナ入り、首都キーウに至ってゼレンスキー大統領と会談することとなった。
まさに「電撃訪問」と呼ぶのがふさわしい行動である。
そしてまた私見では――決して意図してそうしたとは思わないが――、結果的にはほとんど最高のタイミングでの訪問ではないかと感じられる。
まず大前提として、5月には広島でG7サミットがある。
ここに出席する首脳陣でまだキーウを訪れていないのは、岸田首相だけだった。
広島サミットでウクライナ問題が話し合われないわけはなく、それどころか主要問題になるのは目に見えている。
その中で開催国・議長国である岸田首相が「ウクライナへ一人だけ行ってもないのに」ウクライナ問題を語るなんて、サマにならないことおびただしい。
これだけの理由でも、5月までには何としても岸田首相はウクライナへ行かなければならなかった。
そして第二に、ちょうど今まさに中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談している。
それに日本とウクライナのトップ会談をぶつけた形になるのは、(あんまり褒め過ぎる言葉になるが)絶妙なタイミングでありコントラストではないか。
日本がロシア側につくなんて選択肢はない以上、残るは中立(傍観)かウクライナ側につくしかない。
しかし日本が「西側クラブ」の一員である以上、中立なんて選択肢もありはしない。
どうせウクライナにつかねばならないのなら、こうやってハッキリと旗幟鮮明にしておいた方がいいのである。
ただ単に「何にもない時に」ポツンと単独訪問するよりは、はるかに効果があるのである。
岸田首相は英明だとも強力だともサッパリ言われないリーダーであり、就任以来、何か評判のいい施策を打ち出したことも一度もないかに見える。
しかし今回ばかりは、タイミングの女神が微笑んだのだろうか。
今度ばかりはツキがあったのだろうか。
もちろんゼレンスキー大統領との会談では、例によって「戦後復興」とかに日本が何百億円・何千億円のカネを出す、という話になるに違いない。
また国民の税金をバラまくのか、そんなことより苦しむ国内の方にカネを使え――
と、日本国民は大挙してネットに書き込むに違いない。
しかし、そう書き込んでいる人たちもわかっているはずだが、日本にはカネを出すしか能がないのである。
兵器提供も補給物資支援すらもロクにできない以上、カネのバラまき以外に日本が外国を支援する道はほとんどない。
そして、だったらそんな付き合いはやめればいい、というわけにいかないのも、多くの人は内心わかっているはずである。
今回のキーウ電撃訪問は、最低でも広島サミットで主催国の格好がつくというメリットはあった。
また、プーチン-習近平会談とちょうどぴったり重なったことで、素晴らしいインパクトとコントラストを実現できた。
今回ばかりはほとんどの人が、岸田首相も「成果」を挙げた、と認めざるを得ないのではないか……