5月3日、ロシア大統領府は
「5月3日未明、2機のドローンがモスクワ・クレムリンのプーチン大統領の執務室を狙って攻撃をかけてきた。
しかし、軍の電子制御システムなどにより制御不能にして落下させた」
と発表した。
そしてこれを「ウクライナのゼレンスキー大統領のテロ行為」だとし、「必要な時期に報復を行う権利がある」と付け加えた。
さて、こんなことを聞いて誰もが思いつくのは、「でっちあげ」「自作自演」という言葉である。
あるいはまた、「寝ぼけたこと言ってんじゃねーよ、戦時中だろ、そんな攻撃があるのは当たり前じゃん」と思う人もいるだろう。
それはそうで、他国と戦争するのならその敵国の最高指導者をブチ殺してやろうとするのは、誰でも考え付く当たり前の戦法だ。
ましてやその最高指導者が独裁者であるのなら、ますますそうしようと思いたくなる。
しかし、とはいえ、それが成功する例はほとんどない。
これまでの成功例と言えばテロ組織の首領を狙ったケースくらいであって、国家元首を仕留めた例はないはずである。
そしてまた、「たった2機のドローンで執務室内の国家元首の標的を狙う」というのは、まともな人間なら立案も実行もまずしないことだろう。
これで成功を確信できるとすれば、それは旧ソ連の小型「スーツケース核爆弾」なんかをドローンに搭載した場合だけである。
しかしそんな超小型核爆弾があるのであれば、わざわざドローンに乗せて飛ばす必要はない。
よって私にはやはり、これがウクライナ国軍の正規の作戦であるとはちょっと思えないのだ。
では、これは「当然ながら」、ロシアの自作自演なのだろうか。
まさにそんなこと、いかにもプーチン・ロシア(みたいな独裁軍事国家)のやりそうなことではある。
しかしもう一つの可能性として、ロシア国内の反プーチン勢力がやったことだという見方もある。
もちろん私なら、プーチンが建物の中にいるときでなく野外にいるときを狙うところではあるが……
世の中には私や部外者のあずかり知らぬ、いろんな事情があるものである。
たった2機のドローンでクレムリン執務室にいる(はずの)プーチンを狙わざるを得ないというのは、国内の反プーチン勢力にとって精一杯の作戦である――
というのは、なかなかあり得そうな話だと思う。
だいたい自作自演だとしても、「ドローンのクレムリン侵入を許した」なんてことは、ロシア軍とプーチンにとってかなり不名誉なことだと思えるのである。
それはまるで太平洋戦争序盤の日本が、「米軍機が東京・皇居に侵入して爆弾を投下した」なんてニュースを自作自演するようなものではないだろうか……