プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ロシア-北朝鮮首脳会談「神聖戦争」ぶち上げ

 9月13日、ロシアの中国国境に近いアムール州のボストーチヌイ宇宙基地で、ロシアのプーチン大統領北朝鮮キム・ジョンウン金正恩)総書記が、2019年4月以来の首脳会談を行った。

(⇒ ロイター 2023年9月13日記事:ロ朝首脳会談、金氏「帝国主義と戦う」 軍事協力にプーチン氏言及)

 まず思うのは、会談の地がロシア側の首都・モスクワでないことである。

 これはたぶん、キム・ジョンウン側が「そんなに遠くまでは諸事情で行けない」ことを示している。

 おそらくは、たとえ数日でも北朝鮮からそんなに遠く離れてはいられない内情があるのだろう。

 飛行機でモスクワへ行けばいいようなものだが、しかしウクライナ無人機でモスクワを攻撃することが度々あるようで、万一にでも途中で攻撃・撃墜でもされたら困るというロシア側の事情もあるのだろう。

 しかし何より注目されるのは、キム・ジョンウンがロシアの行うウクライナ戦争のことを――

 「神聖な戦争」であり、両国はともに「西側の帝国主義覇権主義という巨悪と戦う」、ロシアの勝利を確信している、と語ったことである。

 このうち、帝国主義覇権主義と戦うというのは、曲がりなりにも社会主義国を名乗る国としては定番のセリフだ。

 社会主義国または共産主義国が戦う相手は、いつだって覇権主義であり帝国主義であるのに決まっている。

 そしてまた、対談相手であるロシアの勝利を確信しますとその場で言わないわけもない。

 まさか「早期停戦を望む」なんて言えるわけもなく、「無法者国家」北朝鮮と言えども、そんな常識はわきまえている。

 しかし、「神聖戦争」とまで言うとはさすがにちょっとビックリである。

 英語で言えばホーリーウォー、古代ギリシアにもそういう名前の戦争があったが、まるで中世の宗教戦争の呼称かイスラム過激派の呼号のようではないか。

 それはともかく、これで「ロシア」と「北朝鮮」が同盟に近い協力関係にあるのは(今更ながら)ハッキリした。

 この協力関係には他に「ベラルーシ」が入り、あとは今や親玉格の「中国」を入れていいものかどうかが微妙である。

 かつて20世紀末アメリカのパパ・ブッシュ大統領は、イラン・イラク北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだ。

 さしずめロシア・ベラルーシ北朝鮮・中国は、現代版「悪の枢軸」といったところだろうか。

 いや、ロシア側からは「反帝国主義神聖同盟」と言いたいところだろうか。

(それにしても、イランとイスラム過激派は影が薄くなったものだ――)

 
 何にせよ、日に日に世界は「陣営」の区別がハッキリしてくるようだ。

 それはまるで、第一次と第二次世界大戦の前夜にも似ていると感じるのは気のせいだろうか。

 それともこれも、歴史上ではよく生じる色分けと片付けるべきだろうか。

 しかしまあ、ロシアも中国も第二次世界大戦ではアメリカ・西欧(ドイツを除く)と同じ陣営にいた国である。

 北朝鮮は、その陣営に(日本の支配から)解放された国である。

 そう考えると、特にアメリカにとっての第二次世界大戦とはいったい勝利と言えるのかどうか――特に中国を「失陥」したことについて――、22世紀の歴史学ではどんな論争が起きることかと思うのである。