アメリカのバイデン大統領は、今年8月31日までに米軍をアフガニスタンから撤退させることにしている。
しかし日本が東京オリンピックに湧いている間に、あの「タリバン」はあれよあれよとアフガン全土を快進撃。
8月15日現在、アフガンの主要都市は全てタリバンに制圧され、残るは首都のカブールのみ。
しかも8月15日午後には、アフガン政府の内相が国民に向けて「(タリバンへの)権力の移行は平和裏に進む」との見通しを示した。
もうこれは、タリバンの勝利確定である。
タリバンは国を奪回し、アフガニスタンは2001年の9.11テロ前に戻ることになる。
元の木阿弥とはこのことで、アメリカにとっては「失われた20年」みたいなものだ。
いったい、この20年間の米軍の苦闘は何だったのか……
私がアメリカの軍部の人なら、怒り狂うのと意気消沈するのを同時にやってしまいそうだ。
ところでアフガンについてだが、アフガンがこんなことになるのは初めてではない。
1989年にソ連軍がアフガンを撤退したのは有名だが、しかしアフガンからすっかり手を引いたのではなく、後にはナジブラ政権という共産党政権が残された。
しかしこれも、1992年にムジャヒディン(イスラム)勢力に打倒される。
(ナジブラ大統領は、残された当初から悲壮な覚悟を決めていたようである。)
それとほとんど全く同じことが、30年の時を経てまた再現された。
アフガニスタンという国には、こんなことが起こるのが定めなのかと疑うほどの既視感である。
そしてアメリカにとってもまた、これはまるでベトナム戦争の再現であるかのようだ。
米軍はベトナムから撤退し(戦争のベトナム化)、後に残された南ベトナム政府は北ベトナムに征服された。
いったいどうしてアメリカは、世界最強最大の軍事力がありながらこんな「負けグセ」が付いているのだろうか。
何だかこの調子では、米中対決はおろか北朝鮮にさえロクな対処ができるとは思えないではないか。
ましてやイランと対決するなんて、もう何をか言わんやである。
今回「また」アメリカがアフガニスタンで土を付けたのは、(日本ではそうでもないとしても)かなり大きな影響を世界にもたらしそうである。
中国もロシアも北朝鮮も、これで相当に対米関係に「自信」を付けたのではあるまいか。
米軍がいくら強くても、タリバンさえアフガニスタン一国さえ平定できない。
そして逆にサウジアラビアやイスラエルなんかは、ますますアメリカを頼りなく感じる。
そうなるとイスラエルあたり、ますます独断でイランとの対決姿勢を強めるようになるのではないか……とも思うのである。