先日日本では、全国民を震駭させたと言っても過言ではない「北九州マクドナルド女子中学生殺人事件」が発生した。
一方ドイツでは12月20日、大勢で賑わうクリスマス市に「元イスラム教徒の移民医師」が車で突入、子どもを含む5人が死亡した。
さてもちろん、どちらの事件もこんなことが両国で初めて起こったというわけではない。
しかしこの2つの事件、今までとはちょっと毛色が違うところがあるのを、ニュースを見聞きした人は感じたはずである。
まず北九州市マクドナルド事件だが、犯人の43歳の男は「かなり裕福で、普通に働かなくてもカネに困らない」身の上であったらしい。
これは正直、これまで起こった激発的通り魔殺人の犯人とは異なる点ではあるまいか。
この手の今までの犯人と言えば、カネもなければ人生全般について上手くもいかず、一言で言って(自業自得と言えばそうだろうが)不遇なタイプ――
というイメージであった。
社会と人生に不満憤懣があるからこそ、そうした暴発に出る……
これが通り魔殺人犯の定番でありパターンであるというのは、日本国民一般の共通理解になっているだろう。
しかし今回の犯人は、働かなくても結構なレベルの生活を維持できるという、まさに日本国民にとって夢のような人生であったらしい。
いや実際、日本人のほとんどはこういう生活に到達することを憧れの目標にしているのではあるまいか。
そんな羨むべき境遇にあるにも関わらず、この犯人43歳は、こんなことをしでかしたのだ。
まあ、どんな恵まれた立場のように見えても、実は本人にとっては悩み苦しむことがある……
というのは確かに、「よくあること」として世人に認知されてはいる。
金持ちには金持ちの苦労があるというのは「常識」だし、よく言われているし、身も蓋もないが「金持ちにもアタマがおかしな奴がいる」というのも当たり前と言えば当たり前である。
だがそうだとすれば、犯罪予防の見地からはかなり深刻な問題だろう。
なにせ、たとえ大勢の国民を「働かなくとも食っていける」ほどに収入水準を引き上げることに成功したとしても、それでも激発殺人犯を出してしまうのが実証されたことになるのだから……
また一方、ドイツクリスマス市事件では、車で突入した犯人はサウジアラビア出身の移民であった。
そこまで聞けば誰しも、「またイスラム過激思想者が個人テロをしでかしたか」と反射的に思うはずである。
ところがどっこい、報道で伝えられる人物像では――
●イスラム教を棄教して元イスラム教徒を名乗り、ドイツに難民として永住許可を受ける。
●自身のSNSでもドイツの移民寛容政策を批判する
●ドイツの右翼(移民排斥派)政党を支持する
という風に、イスラム過激主義者とはゼンゼン逆のプロフィールなのだ。
それがドイツ人ばかり(だろう、たぶん)集まるクリスマス市へ車で突入して大勢を殺そうとしたのだから、ワケがワカランと首をひねる人が大多数なのも無理はない。
しかしこのように、現時点では世界的に、今までの定番イメージの枠には入りきらない個人テロ実行者(平たく言えば「危険なヘンな奴」)が増えてきているのではあるまいか。
生活に困らずむしろ裕福であっても激発する、医師であっても暴発する――
そのような思想犯というか「思想のねじくれ犯」というのが、これから世界的に増える(いや、増えている)のではなかろうか。
そう、「危険なヘンな奴」は社会のどの階層にも潜んでいるし、あるいはあからさまに存在している。
富裕層にも知識階層にもイスラム圏からの脱出者にも、どこにでもヘンな奴はいる。
その当たり前と言えば当たり前の事実を、改めて認識して犯罪予防に当たらなければならないのだ。