プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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接客トラブルで店員の子を自宅殺害未遂?-人々よ接客業になるなかれ

 5月10日の朝、東京都大田区西蒲田の住宅街で、登校しようとしていた中学1年生の男子が61歳の男に胸などを刺されて殺害されかけた。

 この61歳の男は、当の中学生男子の父親と「接客トラブル」になっていたという。

 彼は少年の父親が勤める家電量販店に毎日のように来店し、なぜかこの父親を指名して接客に当たらせていたという。

 そして今回の事件の前日の夕べ、この父親宅を訪問し「もう(おまえの?)店なんか行かないからな!」と怒鳴り散らしていたという。

(⇒ 集英社オンライン 2023年5月10日記事:〈蒲田・中1刺される〉白いスニーカーが血で真っ赤に染まって…被害者父は「顔知ってます、名前もわかります」と警察に伝達。前日には「もう店なんか行かないからな!」と怒鳴り声が…)


 まずこの加害者の姿の写真について誰もが思うのが、これは「危険風貌罪」とでも言うべき犯罪級の悪質さではないか、という感想だろう。

 ヤクザやマフィアや半グレみたいな危険な風貌というわけではない。

 それとは別種の、違う性質の危険さである。

 人を見た目で判断してはならない――という「正しい」はずのことが誤りであることを、非常に頻繁に、この手の事件の犯人が反証し続けているのは人のよく知るところだ。

 こんな風貌の人間が、まともであるなどということはない……

 とは言い過ぎにしても、そう思って距離を置くのが普通の人間の健全なリスク意識というものだろう。


 そして風貌どおりと言うべきか、「毎日同じ家電量販店に来店する」のはいいとして――

 「毎回同じ店員を指名して接客させる」というのがもう、危険極まるヘンな奴ぶりである。

 しかもどうやってか(退勤後の跡を尾けたのか?)その店員の家まで知っていて、しかも実際にインターホンを押し鳴らして怒鳴りつける。

 さらにその店員の子を殺そうとする。

 これを狂気のモンスタークレーマーと言わずして、何と言おう。

 しかし毎度毎度、不思議なのは――

 これほど毎日凶悪異常の殺人(未遂)事件が起きていても、世の政治家や政治家志望者の皆さんは、(たぶん)一人として刑法改正を訴えて立候補しないことである。

 これは国民の支持を十分に得られるイシューだと思うのだが、なぜそうしないのだろうか。

 もしそんな提案をする人が当選しないのだとすれば、それは日本国民が本当はこの手の犯罪に怒っていないということだと思われる。

 ましてやそもそも立候補者すら現れないのは、何をか言わんやだろう。


 さて、それはそれとして、もう世の中の人がハッキリわかっていいことがある。

 このブログでは腐るほど言ってきていることではあるが――

 「人と接するリスク」「ヘンな奴(と関わり合いになってしまう)リスク」を考えると、今から就職しようとする人は、決して接客業を選んではならないということである。

 もう現代日本では、こういう定理が確立したと言っていいだろう。
 
 それは「人と接することが多いければ多いほど、その仕事は危険」という定理である。

 自分や家族が殺されることはさすがに稀ではあるとしても、ヘンな奴と一人でも関わり合いになってしまえば、精神的にも仕事的にも甚大な被害を受けるのだ。

 そしてもちろん日本の精神風土を考えれば、この定理はすぐ

「人と接することが多いほど、その仕事は卑しく汚い」

 というものになる。

 つまり接客業とは、一昔前の3K――「きつい、汚い、危険」の仕事と見なされるのは必定だろう。

 そしてもう、今の若い人はそういう感覚になっていると思う。

 いや、いやしくも毎日スマホをいじってこの手のニュースを見ていれば、そういう感覚にならなければウソである。

 どこのどんなヘンな奴と関わり合いになるか知れない「不特定多数相手」の接客業に、リスク回避傾向が極めて高いと言われる現代の若者が、惹かれる要素などあるはずがない。

 おそらく今の若者で特に勉強熱心な者がいるとすれば、それは「接客業なんか」に就く羽目にならないように、という理由が大きいのではなかろうか。

 人と接するのが嫌だから、客と接するのが嫌だからしっかり勉強してSEになる、という人は大変多いように思う。

 しかし、とはいえ、残念ながら――

 日本人労働者の多くは、何らかの接客業に就かざるを得ない。

 これが現代日本人労働者の幸福度の低さ、世界最低レベルの仕事への忠誠度の低さに繋がっているとするのは、はたして的外れだろうか。