プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ふじみ野市猟銃人質射殺事件-医者も変な奴リスクを免れない世

 1月28日、ふじみ野市において66歳の男が、92歳で死亡した母の訪問介護に当たっていた医師ら7名を自宅に呼び出し、彼らの一部を人質にとって散弾銃を持って立てこもった。

 警察は11時間後に突入したが、既に医師44歳は撃たれて死亡した後であった。
 
 この事件で思うことは、

「医者(すら)も『変な奴リスク』から逃れられない」

 という暗黒的な事実である。

 

 この66歳の男、以前かかっていた(ふじみ野市に引っ越してくる前の)病院でも、自分の母を他に優先して診察しろだの大声を出すことが多々ある、札付きの気色の悪いクレーマーであったらしい。

 当然のごとく今回犠牲になった医師ともトラブルを起こし、いよいよ母が死ぬと家に呼び出して射殺するという挙に出た。

 しかも射殺前に、なんと死んだ母の遺骸に蘇生措置を施せと要求したというのだから、その執着度のキモさは並外れている。

 しかし、私も又聞きでしか知らないが、医療現場においては――

 この手の「執着系クレーマー」の子や親族が、割とちょくちょくいるようなのだ。

 彼らはたとえ親が90代であってさえ、死なせたら許さんぞという態度で医療従事者に臨んでくるらしい。
 
 なんだか、「親の年金を少しでも長く貪りたい」あるいは「実はその親と近親相姦していた」なんてことすら想像させるのだが……

 しかし問題は、この手のキモい変な奴に、(何十年も何百人も診療しているうちに)医療従事者はいつか必ず出くわすのだろう、ということだ。

 もちろんこの問題は、「人と接する」全ての職業従事者に当てはまる。

 つまり、日本の労働者のほとんど全てが「変な奴リスク」の脅威に直面している、ということである。

 
 医師と弁護士と言えば、今の日本で最高ランクの評価をされる職業であり地位である。

 しかしそうであっても、「変な奴リスク」「人と接するリスク」から自由ではない。

 いや、むしろ、変な奴に出くわすリスクは一般より高いくらいかもしれない。

(つい先日の「心療内科放火大量殺人事件」もまた、医者・医院が標的となっていたのは示唆的である。)


 今の日本は、もはや製造業の国ではない。

 その労働者の大部分がサービス業で括られるのは、国民的常識だが――

 そのサービス業とは即ち、「人と接する職業」というのとほとんど同義である。

 だからあなたや、あなたの息子や娘やその孫たちは、サービス業(医者も弁護士もそうである)に就職する可能性が最も高い。

 つまり、あなたやあなたの子・孫たちは、変な奴リスクの地雷原に放り込まれているわけだ。

 そして実際、既に変な奴に遭遇してヒドい目に遭ったか、いつ変な奴に遭遇するか心配しながら日々を送っている人は、とても多いのではなかろうか。


 あなたは、自分自身や子や孫たちが「普通に・まともに」就職したことを喜んでいる場合ではない。
 
 あなたの子や孫は、変な奴リスクに間違いなく晒されるからである。

 それが嫌なら、なるべく人と接しない「地味な」「世間でほとんど意識されない」仕事や会社を選ぶべきだろう。


(たとえば、林業などどうだろうか。私も詳しく知らないが、平均よりは人と接さずに済みそうだ。)


 そうでなければ、ユーチューバーや投資家といった、自分一人で他人と接さず収益を上げられる立場を目指すべきである。

 あなたは子や孫がユーチューバーになりたいなどと言い出せば、顔をしかめるのではなく赤飯を炊いて祝うべきである。その実現を応援すべきである。

 あなたは我が子を、「動画配信で食っていける大人」に育てるべきなのかもしれない。

 あるいはまた、あなたが働く目的は、我が子が(世間で働くリスクを負わずに)投資家として食っていけるだけの元手を作る(残す)ことだ――と決めるのも良いかもしれない。

 なにせ人と接する仕事は――つまり、たいていの仕事は――、医者や弁護士ですら「変な奴リスク」に晒されているのだから。

 あえて言えば日本人は、「一億総ユーチューバー」とか「一億総投資家」を目指すべきではあるまいか。

 そうするしか、「人と接するリスク」「変な奴リスク」を避けることはできないのではないか。

 「世のため人のために働きたい」「人と接するのが好き」として、あえて大勢の人と接する職業に就くのは、もはや自殺行為なのではないか。


 もちろん、みんながそんな風になれば、日本はますますダメになり衰退・滅亡していくかもしれない。

 だが、そんな悠長な心配をしている場合だろうか。

 変な奴リスクを減らすことは、あなたとその子や孫にとって、冗談抜きで喫緊かつ死活的な課題ではあるまいか。

 こうして見ると、「変な奴リスクが日本を滅ぼす」と言っても、そんなには的外れではないように思える。

 ハッキリ言って「変な奴リスク」は、北朝鮮や中国の脅威とか、新型コロナの脅威などより、はるかに身近で実害のある脅威である。

 はたして日本人は、この人生最大級の個人的かつ普遍的リスクに、どのように対応(というか適応)していくのだろうか……