8月1日、例の山口県阿武町「誤送金使い込み事件」被告である24歳の男が、山口南警察署から保釈された。
その保釈金340万円を出した(貸した)のは、人気ユーチューバーのヒカルであった。
そして男は今後、ヒカルの関連会社に雇われて山口県内でリモートワークする話を進めているという。
この保釈時の映像、すなわち男が見たこともないようなボサボサのロン毛で警察署を出てその瞬間、風にあおられてロン毛が顔を完全に隠したシーンは、なかなかの爆笑映像である。
しかしそれは、ひとまず措く。
今回のヒカルの行為は売名行為ではないか、340万円を貸すことで話題性抜群の人間コンテンツを入手したということではないか、という話もひとまず措く。
ここで思うのは、もう人気ユーチューバーというのはマスコミという第4の権力に続く、第5の権力になったのではないか、ということである。
今回のヒカルの件に限らず、ガーシーもコレコレも天才むかたんも、その他諸々の人気ユーチューバーたちは、YouTube動画を武器に人気・名声・富を築いてきた。
そしてそれが、本人らが意図していようといまいと、自然に世の中を動かす権力者の座に駆け上らせてきた。
いまや日本の権力の源泉は、ツイッターのフォロワー数やYouTube動画の登録者数になった観がある。
その影響力という権力を使えば、ネット外の実社会の誰かに破壊的影響を及ぼすことができるのである。
(そして彼らの動画再生数はさらに上がり、富も名声も影響力もますます増える。)
この新しい第5の権力は、今までの権力より我々にとってさらに身近な脅威である。
なぜかと言って国も警察も、あなたやあなたの職場がヘマをやらかしたからと言って、動画を撮りに来てネットにアップするということはない。
テレビ局などマスコミと言えど、そんなにズケズケあからさまに無編集動画をテレビで流すことはない。
しかしユーチューバーは、それをやる(やれる)。
彼らは応対したあなたの反応を無編集でネットに流し、破壊的印象ダメージを与えることがいつでもできる。
彼らは個人であり、所属的には一般市民であるゆえに、組織道徳や社会倫理、もしかしたら憲法の理念にさえ拘束されることはないからだ。
そのうえ彼らには、信者のようなファンがついていたりする。
いったん人気ユーチューバーのターゲットにされたなら、すぐそのファンたちから誹謗中傷攻撃を受けることにもなる。
しかも人気ユーチューバーの指示がなくとも、勝手にそんなことをしてくれるのだ。
(だから何の罪にもならない。)
こんなにもあなたを直接に叩き潰すことのできる権力は、現代では国も警察もマスコミも持ちようがない。
この第5の権力は、「動画権力」とも言うべきだろうか。
政治権力や警察権力、マスゴミの横暴には抑制手段があるとしても、「一般人」の動画権力にはそれがあるのだろうか。
日本の「有名人民主制」と動画権力の結合は、やはり「民衆に支持される貴族政」を生み出すとしか思えないのだが……
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