プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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独「陰謀論」クーデター未遂事件-ドイツ右翼の伝統は今も

 12月7日、ドイツ警察は政府転覆のクーデター容疑で、貴族の末裔「ハインリヒ13世」71歳・極右組織「ライヒスビュルガー」関係者・元軍人・ロシア人女性・陰謀論「Qアノン」信奉者ら25人を逮捕した。

 彼らは連邦議会議事堂を襲って政権奪取を画策し、新政府樹立後の施設として使うため、陸軍基地や兵舎の視察も行っていたという。

 なお、彼らの中の「Qアノン」というのは下記引用記事にあるように――

 自国は世界的権力者たちの闇のネットワーク「ディープステイト」に支配されていると信じ、アメリカ政府内の「悪魔崇拝小児性愛者」による「ディープステイト」関係者を、前大統領のドナルド・トランプ氏が逮捕し処罰するだろう、という陰謀論を信じるグループのことである。

(⇒ BBC 2022年12月7日記事:ドイツ、クーデター計画容疑で25人逮捕 議事堂襲撃を画策と)


 しかしまあ、つくづくと、ドイツ右翼の伝統というのは強固である。

 そして残念ながらというかなんというか、これはいかにも「ドイツらしい」事件でもある。

 Qアノンの発祥地でありメッカであるアメリカでさえこんなクーデター未遂は起こっていないのに……

 弁護士や裁判官、精鋭特殊部隊員、元軍人とかといういっぱしの人たちすらこんな陰謀論者とつるみ、真面目にこんなクーデター計画を実施しようとしていたのである。

 そして「ディープステイト」を「ユダヤ人」に変えるだけで、たちまちまるで1920年代のドイツ右翼の格好にもなる。

 これはさしずめ、あの有名な――カップという名前と「20世紀ドイツなのに一揆という名前」ということで有名な――1920年の「カップ一揆」の再来だろうか。

 そして不謹慎ではあるが、Qアノンじゃなくて「世界は爬虫類人に支配されている」系の陰謀論者が関わっていたならば、もっと面白かったのにと思ってしまう。

 また、もう一つ思うのだが――

 日本で1995年に発生した地下鉄サリン事件オウム真理教事件というのは、つくづく「先進国におけるカルトクーデター未遂事件」の魁であった。

 いっぱしの先進国でそんなことが起こるというのは、既に前例があり実証済であった。

 その意味では意外にも、日本は「先進国」なのだ。

 なお、今回の事件により、「カルトクーデター」未遂が起こった国はなぜか第二次世界大戦で枢軸国だった国だけとなった。

 その伝で行けば、次はイタリアでこういう事件が起こるのだろう。

 いったいなぜそうなるのか、特に日本とドイツはなぜこんな類似性があるのか、なかなか興味深いことではある。


 ところで現時点での報道を見る限り、ドイツ右翼の代表格であるネオナチ関係者は、なぜか今回の事件に関わっていないようである。

 ドイツ右翼の伝統は変わらずとも、その主流にはやはり流行り廃りがあるのだろうか。

 ナチスはもうさすがに古く、時代はアメリカ渡来の最新陰謀論のものなのだろうか。

 これもまた、興味を引かれるところではある……