8月2日、アメリカはアフガニスタンにおいて、アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリをミサイル攻撃で殺害した。
使われたミサイル2発は、爆発する弾頭でなく6枚刃を備えた「忍者爆弾」ヘルファイアR9Xであり、ザワヒリ以外の犠牲者はなかったという。
なんだか忍者爆弾というよりは、「手裏剣ミサイル」と言った方が正確なような気がする。
(⇒ AFP-BBニュース 2022年8月2日記事:米、アルカイダ指導者殺害に「忍者爆弾」使用か)
アイマン・ザワヒリと言えば、故ウサマ・ビン・ラディンの盟友というか副官というか――
2001年のアメリカ同時多発テロにも関わった、イスラムテロ組織アルカイダにおける重鎮であり最重要人物の一人である。
それを仕留めたというのは、アメリカにとって大戦果だ。
しかもそれを無人機から発射した新型ミサイルでやったのだから、
ロシアとウクライナのまるで第二次大戦のような古典的戦争と同時並行で行われているとは思えないような“快挙”だろう。
ここで思うのは、もうアメリカとロシアの戦争は次元が違うということである。
アメリカによる戦争はますます「人道的」になり、その戦争は「暗殺戦争」と呼ぶべきものに変容している。
なぜ人道的かと言えば、極論すれば敵のたった一人を殺せばいい――
すなわち、戦死者を極限まで減らす戦争ができるようになったからだ。
そして世の中は「カリスマ的な人物」や「スゴい人」をますますもてはやすようになっているので、ますます彼(彼女)一人を殺すことには価値が出てくるようになった。
もはや戦場で何万人の無名人を殺すより、カリスマ指導者やスゴい人をたった一人だけ殺す方が、ビッグニュースとなり話題となり、オイシイ効果的な仕事になるのである。
北朝鮮の軍隊を何万人も殺すより、金正恩1人を暗殺する方が効果がある。
日本の街角で10人くらい殺すより、有名ユーチューバー1人を殺す方がはるかに世の中の反響は大きい。
これが独裁国家の独裁者に当てはまることは言うまでもないが……
逆に民主主義の進んだ国が敵国であれば、その指導者・指導層だけを殺す形の戦争であれば、敵国国民の反発は弱いはずである。
いや、もしかしたらむしろ、敵国国民はそんな戦争を歓迎し喜びさえするかもしれない。
庶民が死なずに上級国民だけが狙われ除去されるのであれば、「やったぜ」と快哉を叫び「おもしれぇ」と感じる国民は、きっと少なくないだろうからだ。
きっとウクライナ戦争にもかかわらず、世界の戦争潮流は急速に「暗殺戦争」にシフトしていくことだろう。
戦争はもうたった一人が殺されさえすればいい、極限までに人道的なものになろうとしている……