2020年は、アメリカとイランのものすごいクライシスで幕を開けた。
すわ、ついに戦争かと思ったら、どうも尻すぼみで終わりそうな感じが漂ってきた。
イラン国内で、ではなく隣国イラクの首都で、である。
それはもちろん、ソレイマニ司令官が外国で作戦中(アメリカにとってはテロ作戦)だったからだ。
もし彼が自分が率先して最前線に出る「闘う司令官」でなく、本国の奥深くの司令室から指示を出しているような普通の司令官であったら、こんなことにはならなかったろう。
そしてたぶん彼は、まさか自分をアメリカが殺しにかかるなんて思ってなかったろう。
彼自身もイランそのものも、アメリカを舐めてた・タカをくくってたとしか言いようがない。
しかしアメリカの発表では、死者はゼロである。
なんでもイランは事前にイラクへ攻撃通告を行い、死者を出さないよう着弾点も調整していたとも言われる。
まさに茶番というか、「ナンチャッテ攻撃」である。
私はイランについて詳しくもなんともないが、イラン国民はインターネットにアクセスできず、ただ国営テレビの報道を鵜呑みにしているのだろうか。
もしそうだとしたら、なんとも可哀想な境遇である。
そしてまるで、蛇足の悲劇であるかのように――
これがまた、イランの防空ミサイルの誤射ではないかと言われているのだ。
これが正しいとすれば、イランにとって何という偶然なのだろう。
イランは確かに、中東では(イスラエルを除き)最強の軍備を誇る国家である。
しかしもちろん、本気で戦えばアメリカに勝てるわけがない。
イラン海軍は小型船舶を大量に使い、米海軍を翻弄するのではないかとの話もあるが……
イラン海軍は小型船舶を大量に使い、米海軍を翻弄するのではないかとの話もあるが……
どうも、あのベトナム戦争の影響は、世紀を超えて大きいようで――
「ゲリラ戦だったらアメリカ軍に勝てる」というのは、子どもから大人まで世界的な通念になってしまっているようである。
しかしイランにしてみれば、そんなので多少アメリカを苦しめたところで、大切な核施設を完全破壊されてしまうのは目に見えている。
たとえ本土決戦(地上戦)で負けないにしても、そうなったらイランの影響力は地に落ちるので、全面戦争なんてやりたくてもやれないのである。
一方アメリカの方も、イランの現政権を壊滅させて直接占領するとか、傀儡政権を建てられる見込みはほとんどない。
(たぶんアメリカは、イラン国内にその手の協力者をほとんど全く抱えていない。
よっておそらく、今後の両者は「本国外で作戦中の部隊や要人は殺し合うが、いつも尻すぼみで終わる」パターンがしばらく続くのではなかろうか。
しかしそれはそれとして、アメリカとイランは「いつかは」対決しなければならない間柄だろう。
中国の共産党政権はいずれ崩壊するかもしれないが(別に中国自体が滅びるわけではない)、
イランのイスラム政権が崩壊する可能性は当分の間ゼロに等しい。
その意味でイランはある意味、中国以上にアメリカにとって厄介な相手である。
(しかも例によって、ロシアと中国がそのバックに付いている。)
何の根拠もない予測ではあるが――
アメリカとイランが本気で闘うのは、2040年年代~2050年代あたりではなかろうか。