プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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電車内喫煙注意・逆ギレ暴行事件-「変な奴リスク」と「もう電車には乗るな」

 1月23日正午頃、栃木県の電車内で――

 優先席に寝転がって喫煙している(!)28歳の男を男子高校生17歳が注意したところ、逆ギレによる暴行を受けて土下座させられ、さらに下車したホームでも暴行を続けられて顔の骨を折る重傷を負わされた事件があった。

 駅員の通報で警察に逮捕された男は、「向こうから喧嘩を売ってきた」と言っているという。

 なんかソマリアあたりの街角を思わせるような、あるいは同じ日本でも南北朝時代の街角を思わせるような事件であるが……

 これはまぎれもなく、現代日本の街の電車の出来事なのであった。

 この事件については、乗り合わせた乗客が誰一人高校生を助けには入らなかったことを筆頭に、暗澹・憤然たる思いに駆られる人が大半だろう。

 しかしそういうことより、さらに重大な問題がここにはある。

 それは(もうこのブログでも何度となく書いてきたことだが)、この日本では「変な奴リスク」が日を追うごとに高まっている、ますます危険性が増している、ということである。

 

tairanaritoshi-2.hatenablog.com

 

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 今回の事件の男も、まず電車の優先席に寝そべってタバコを吸うという、マンガの世界でもなかなか見ない、傾奇者か北斗の拳の悪役みたいなことをやっている。

 この時点で強烈な「変な奴」である。

 乗り合わせた乗客はたぶん怖くて何もできなかったのだと思うが、しかし「触らぬ狂人に祟りなし」を決め込む気持ちもわかる。

 こんなのに関わったらロクなことがないからである。(実際、関わった高校生は酷い目に遭った。)


 こうした危険な変な奴がどこにでもいる……そして毎日のように事件を起こしている、ということは、もう日本人の常識というか実感となっている。

 では、どうしたらそういう人間に出くわさずに済む、すなわち「変な奴リスク」を減らすことができるか。

 それはまず、電車を筆頭とする公共交通機関に乗らないことである。

 せめてバスに乗ることである。

(電車の方が広いオープンスペースであるせいか、それがヘンな奴の行動をバスより「大きく」させるようだ。)


 そしてまた、リモートワークするか地方移住して車で通勤するように、生活や働き方をシフトすることである。

 まるでコロナ下での働き方改革のようだが、これは変な奴リスクを軽減する観点からも重要なことだ。

 世間では、車に乗らず公共交通機関に乗ることが地球環境に優しいなどと言われているが――

 しかし、そんな悠長なことを言っている場合ではない。

 変な奴リスクに晒されるリスクは、まさに「今そこにある危機」であって、地球環境が悪くなろうがそんなことは知ったことでないほど、喫緊の重大なリスクである。

 
 そして次に、そもそも「人と接する」職業に就かないこと。

 当たり前だが、人と接する機会が多ければ多いほど変な奴リスクは格段に高まる。

 たとえば今回の事件に対するネットのコメントでは、「一般人がせめてできることは、駅員を呼んで対応を委ねること」というのがやっぱり多い。

 しかしこんなの、駅員の身になってみればたまったものではない。

 こんな変な奴と対峙させられるリスクを、思ってもみよ……

 しかも周囲の助けは得られず、逆に乗客には「何とかしろよ」「おまえの仕事だろ」というようなプレッシャーを無言でかけられるのである。

 普通の感性を持つ人間なら、絶対にこんな仕事はしたくない。

 いや、そうでなくても駅員というのは、酔っぱらった客に暴力を振るわれるので有名な仕事ではないか?

 はたして現代、「駅員さんになりたい」と思っている子供や学生がどれだけいるか――

 昔ならそう思っていた子供や学生はそれなりにいたかもしれないが、今はもしかしたらゼロに近いのではなかろうか。


 現代の子どもは将来ユーチューバーになりたがっている、などとして慨嘆する人は多い。

 しかし、もしその将来の希望が本心からのものであるならば、現代の子供はむしろ聡明、「わかっている」とも言えるだろう。

 子供たちは知っている、看破している、のかもしれない……

 今の世の中、もし普通に就職して働けば、それは人と接する羽目になるということに。

 そんなことしたら、変な奴リスクに晒されて酷い目に遭うに違いないということに。

 人と接するのが人生における最大のリスクだ、それは南海トラフ地震より恐ろしい日常的なリスクだ、というのは、日々のニュースを見ていれば誰だって感じることだろう。

 だとすれば子どもや若者が、なるべく可能な限り人と接しないでいい仕事を選びたがるのは当然である(そして賢明である)。

 すぐ思いつくのはユーチューバーの他に、ネットトレーダー(個人株屋)、IT企業(特にベンチャー)の技術系、そしていわゆる「職人」系・研究者系の仕事だろうか。

 当然ながらこの観点からは、不特定多数の顧客と接する小売業などは最低ランクになってしまう。

 そしておそらく、これだけ空き家が多くなっているのに家を貸し出そうとしない家主が多いのも、まさに「変な奴と関わってしまうのが嫌」という理由が大きいのではなかろうか。


 今後、変な奴リスクが軽減する気配はまるでない。

 よって今後、人と接する仕事はますます敬遠されるようになる。

 人と接すれば接するほど、その仕事は下等なものと見なされるようになる。

 そして貧富の格差がますます広がることも重なり、日本社会は今以上に連帯感がなくなっていく。

 地域共同体とか愛国心とかいうものも、社会が左傾化するのとはかなり違う理由によって、ますます薄くなっていくだろう。

 これが戦後も四半世紀を過ぎた時点で、日本が到達しつつある中世的社会なのであった――