プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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 神奈川県茅ケ崎市で、副業で不動産経営していた55歳男性が、50歳の男に自宅玄関で刺殺された。

 この殺人者は、被害者の所有するマンションの家賃滞納により今年1月に被害者に提訴され、10月に大阪簡裁により退去判決を言い渡されている。

 家賃・共益費は月4万円、むしろ安いと言ってよい額だ。

(⇒ 共同通信 2022年12月24日記事:家賃滞納で退去命じられ不満か 神奈川刺殺疑い、逮捕の男)


 一方、世はクリスマスシーズンである。

 そのクリスマスに一人で過ごす「クリぼっち」を狙う商戦が――お一人様市場の一環として――拡大していることも報じられている。

(⇒ テレビ朝日 2022年12月23日記事:「若者の恋愛離れ」は本当か≫"クリぼっち商戦"拡大…背景に「恋愛至上主義」からの目覚め?

 さて、この「家賃滞納逆恨み殺人」と「クリぼっちの普及に伴う商戦拡大」という全然無関係そうな話題も、もちろん関係づけることができる。

 理屈と膏薬はどこにでもくっつくと言うが、落語の三題噺にも見るように、どんな話題同士でも関係づけるのは可能なのだ。

 ではこの二つを関連付ける、いや共通している要素・結論は何かと言えば、それは

「人と接するリスク」

 というものである。

 つい最近も、このブログ記事で書いたことだが――

 不動産賃貸業、業としてやらなくても人に家・土地を貸すことは、非常にリスキーなことなのだ。

 なぜリスキーかと言えば、もちろんヘンな奴・キモい奴・ヤバい奴と関わりを持ってしまうリスクが格段に高まるからである。

(⇒ 2022年12月14日記事:家賃保証会社「滞納追い出し条項は違法」判決-ますますリスキーな賃貸業)


 今回の事件の殺人者も、まさに典型的なヤバい奴だったという。

 家賃滞納された上に裁判の手間をかけられ、あげくに殺されてしまうなんて、たまったものではない。

 しかし世の中には、こういう異常にヘンな奴がいる。

 そういうヘンな奴と関わりを持つ可能性が跳ね上がるのが、不動産賃貸するということなのだ。

 むろん対策としては、

「上流層だけ相手にし、家賃の安い下流層相手の商売はしない」:

「家賃保証会社・物件管理会社に全て任せ、自分は入居者と直接接しないようにする」

 というものがあるのだが――

 前者は初めから多額の資金がなければ無理で、後者は一般的に普及したやり方ではあるが、なんだか道徳的にどうかと思わないでもない。

(嫌なことやリスクを他人に押しつけている、という意味で……)


 今回の被害者が管理会社を通さず、自分一人で賃貸経営していたのかどうかは定かではないが、さすがに(自分は神奈川、マンションは大阪なのだから)何でもかんでも一人でやっていたとは思い難い。

 おそらく、裁判で提訴したとき自分の住所も相手に知られたのではなかったか。

 そうなると、自宅を特定されて逆恨み殺人されるリスクは、どんな大家にでもあることになる。


 そして「クリぼっち」の普及だが、これもまさに「人と接するリスク」の意識が一般に普及した結果であると言えないこともないだろう。

 要するに、恋愛でさえ人と接するのはリスクがあるのだ。

 人と付き合えばカネがいるとか(そのカネが別れたら無駄になるとか)、そもそもメンドクサイとか、それもまた広義のリスクのうちに入る。
 
 考えてみれば、昔の人はほとんど全員が結婚していたというのだが――

 その人たちが「結婚相手の親族がヘンな奴であるリスク」をどう考えていたのか、ほとんど考えてなかったのかというのは、なかなか身近ながら詳細不明の、興味深い点であると思う。

 しかし現代においては、さすがにみんな「ヘンな人リスク」を意識せずにはいられない。

 恋愛するのも仕事するのも、世の中にはヘンな人と接してしまうリスクが満載である。

 ヘンな人と一人とでも接してしまったが最後、人生が終わるとまでは言わないまでも、人生がヘンな方向・嫌な方向に捻じ曲げられるリスクは、まぎれもない現実のものだ。

 現代人は正当にも・当然にも、そういうリスクを避ける方向に進化していっている――

 というのは、あながち間違いでもないだろう。


 日本では人口減少が進んでいるというのに、いまだ全国各地で新築アパートが建ち続けている。

 そのオーナーさんたちは、この現代庶民最大の脅威である「ヘンな人リスク」について、どう考えているのだろうか……