12月12日、最高裁は「入居者が家賃を2か月滞納したら、その部屋を明け渡したとみなす」という家賃保証会社の「追い出し条項」を違法とする判決を出した。
(⇒ ニッポン放送 2022年12月13日記事:家賃滞納「追い出し条項」違法 最高裁が初判断 「逆に、借りにくくなる懸念も」辛坊治郎が指摘)
この判決自体は、特に意外なものではない。
なぜなら日本の不動産賃貸借法には(悪名高い、とも言われる)「信頼関係破壊の法理」というものがあり――
たとえ賃借人が明白な契約違反・賃料滞納をしたとしても、それが「賃貸人との信頼関係を破壊するに至らない場合」には、賃借人は許されることになっているからである。
もちろん「オレは1回滞納したら信頼関係は破壊されたと思う」人は、大勢いるのだが……
しかし一般には滞納の場合、信頼関係が破壊されたと(裁判所にも)みなされるのは、「最低3か月」とされている。
そうなると今回の滞納2か月というのは、まず間違いなく「賃貸借契約解除」「入居者の追い出し可能」とはならないのは、予想されたことではあった。
家賃保証会社をカマそうが何をしようが、この信頼関係破壊の法理は非常に強固なのである。
その意味で逆に、この家賃保証会社はなぜ2か月に設定したのか、なぜせめて3か月に設定しなかったのか、と疑問に思うほどだ。
さて、これとは別に――
私は賃貸アパートを経営すること(所有者であること)、
その経営代行会社・家賃保証会社に勤務することは、かなりリスキーだと思っている。
「相続税対策で、需要もないところに借金してアパートを建てる」ことの危険性はよく言われているが(それでも建ち続けているが)……
それとは全く別種の危険、即ち「ヘンな人リスク」というものが格段に跳ね上がるからである。
アパートには、そしてマンションには、誰が入居希望してくるかわからない。
何十年もアパート経営していれば、絶対に「ヘンな人」が入り込んでも来るだろう。
家賃滞納して行方をくらませる人も、絶対に払わず居座る人も、そんなに珍しいとも思えない。
さあ、そうなったら大変である。
これは下手すれば、目の敵にされて身体的危害を加えられる恐れさえある。
そうでなくても、日々の心労が加わることは請け合いだ。
おそらく現代で最も恐れるべき危険、すなわち「ヘンな人と関わるリスク」が最も高くて身近なのは、「学校の先生になる」と「賃貸住宅を経営する」の二つである。
この二つは、「関わる人が真面目でマトモである」という前提で成り立っていると言ってもいいだろうが……
そんな前提は、もちろん今は成り立ちはしないのである。
その意味で今回の判決は、予想されたものではあったが、やはり入居者審査をいっそう厳しくすることに繋がるだろう。
学校の先生と違い、こちらはまだしも入口段階でヘンな人を排除するチャンスが残されている。
「上に政策あれば、下に対策あり」ではないが……
こういう判決が出れば、世間はそれに応じた対策をするものである。
たとえば、民間版「信用スコア」「信用データベース」を作るとか――