JR大阪駅に、対戦型麻雀ゲーム『雀魂』(じゃんたま)とテレビアニメ『咲-Saki-全国編』がコラボした“萌え絵”広告が大々的に張り出され――
それに立憲民主党の(前衆議院議員)尾辻かな子 氏が「こんな性的な絵を街中に張り出していいのか」とツイートしたことで、是非論が広がっているとのこと。
これについて、弁護士の平裕介 氏が「この広告に問題はない」と書いている。
なんでも憲法解釈論によると、
●聴覚よりも視覚の方が、外部からの表現を回避しやすい。
●よって「見たくないものを見ない権利」という視覚の場合には、「聞きたくないものを聞かない権利」という聴覚の場合より、一段と「憲法上保護されない自由」だと位置付けられる。
つまり、広告を含む「表現の自由」の方が「見たくないものを見ない権利」よりも優越する。
●むしろ開かれた(駅のような)公共空間においてこそ、表現の自由の一環である広告表現を、憲法は手厚く保護している。
ということになるそうだ。
これは、電車内の広告放送に関する「とらわれの聴衆」事件判決(最高裁・昭和63年12月20日)に基づく帰結だという。
私はこの憲法解釈論が「正しい」のか、将来にわたっても「正しい」ままなのか、ここでは述べない。
こんなことを言うのも、判例に基づく解釈には「判例変更」というものがあるからだ。
日本国憲法は不磨の大典なのかもしれないが、社会の雰囲気や国民意識が変われば、判例や解釈も変わる。
数十年後には憲法学者や弁護士たちが、こんなケースについてシレッと「もちろん、性的表現・不快表現は公共の場では一段と厳しく制限される」と言っていたとしても、別に驚くようなことではない。
では、ここで述べたいこと(問いたいこと)と言えば――
こういう広告を公共機関(国や自治体)が張り出したら、憲法学者や弁護士はやはり「問題ない」と言うのか、ということである。
というのも、今まで公共機関が萌え絵広告をして炎上・謝罪・撤去に至った事例は、非常にたくさんあるからだ。
tairanaritoshi-2.hatenablog.com
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私は寡聞にして、これまでの「公共機関萌え絵広告事件」において、弁護士や憲法学者が憲法解釈論を説いて
「これは問題ない」
「世間は憲法をよく学ぶべき」
というような“擁護論”を述べた記事を読んだことがない。
これはただ単に、私がそういう記事を見つけきれていないだけかもしれない。
しかしどうもそうではなく、本当に今までそんな擁護はなされたことがない、というのが事実ではあるまいか。
私としては、ぜひどこかの公共機関に勇気を出して、今回の萌え絵広告と同等の萌え絵広告を駅や街中に張り出すという実験をしてもらいたいと思う。
それで憲法学者や弁護士から、「留保なし」の擁護論をネットに書いてもらいたいと思う。
ゲーム会社やアニメ会社、あるいはJR西日本が萌え絵広告を駅へ張り出すのが「当然に憲法上(見たくない自由とか、不快を押し付けられない権利とかより)保護されるべき表現の自由」であるなら、公共機関がやったって「もちろん」同じことのはずだ。
まさか表現の自由は、民間企業には適用されても官公庁・自治体・警察・自衛隊には制限が付く・留保が付く、なんてことはないはずである。
だから今度、もし公共機関が萌え絵(あるいは萌えVtuber)広告を使って世間から批判されたときは、ぜひ憲法学者や弁護士には表現の自由のために立ち上がってキーを叩き、世間を「啓蒙」し「勉強してください」と言ってもらいたいものだと思う。
これは皮肉でも何でもなく、本当にそうするべきだと思う。
民間企業・民間人の表現の自由は守るが官公庁の表現の自由は守らない、というのは、それは表現の自由の大切さというものを「気分」で決めていると言われても仕方ないと思うのだが……