プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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尼崎市民全員個人情報USB紛失と今度こそ真剣に「酒の害」

 6月23日、兵庫県尼崎市は、尼崎市民46万人の個人情報が入ったUSBを業務委託先の社員が持ち出して紛失した、と発表した。

 なんでもこの委託先社員は、


●個人情報を市の許可なくUSBに移して持ち出し、

●帰宅途中に食事・飲酒し、

●泥酔して路上に寝ていて、目覚めたらUSBの入っていたバッグがなくなっていた


ということらしい。

 そして悲劇の上塗りは、記者会見した尼崎市職員が「パスワードは英数字13桁(なので破られにくいと思う)」とオウンゴールのような応答をしてしまったことである。

 いや、もしかしたらこれは、「わざと」のひっかけ応答なのかもしれない。

 実はもっと複雑で長いパスワードで、万一パスワード破りしようとする人がいたとすれば、その人を欺こうとしたのかもしれない……

 とはいえ私は、むかし何かの漫画で見た「ところで犯人さん?」と問いかけられて思わず(まだわかっていない)犯人が「はい」と答えてしまう、という場面を思い出してしまったのであるが――


 さて、もちろんこの「ソーシャルエンジニアリング、ヒューマンエラー」の見事なまでの典型例の出現に、ネットは沸き返り騒然としているのであるが……

 不思議とほとんど誰も触れていないように思えるのは、「酒の害」という点である。

 こんなことは、酒を飲んで泥酔して路上で寝なければ起こらなかった。

 無断でデータをUSBに落として持ち出す時点で確かにアウトなのであるが、そんな奴でも酒さえ飲まなければこうはなっていなかった。

 
 思えば「タバコ」は、ずいぶん前から「社会の敵」「社会の害悪一辺倒」という扱いをされてきたものである。

 しかし私は(きっと多くの人たちも)、タバコが悪で害だと言うなら、酒の害悪はそれをはるかに上回るのではないかと思ってきたものである。

 タバコで人生を棒に振った人というのは、(寿命が縮んだというのを除けば)容易に見つけることはできない。

 しかし酒で人生を棒に振り、周りの人間までも巻き込んで棒に振らせた人というのは、そこらにゴマンといるのではないか。

 そしてタバコの火の不始末で家を焼いたという悲劇は確かにあろうが、

 酒のせいで家どころか人生の何もかもメチャクチャになった人というのは、家が焼けた件数どころじゃないだろうと思うのである。

 そこに来て、今回の事件。

 もう我々は本当に、真剣になって酒の害と向き合うべきである。

 
 たとえば「当社は喫煙者を採用しません」という会社は、いまや珍しくない。

 しかもそれは、どちらかというと(いや、はっきりと?)肯定的な報道のされ方をすることが多い。

 しかし思うに、「当社は飲酒する人は採用しません」という会社が出現し広まる方が、はるかに世の中にとって有益ではあるまいか。

 特に、今回のような機密情報を扱う会社である。

 もしその社員の全員が酒を飲まない人たちであれば、そうでない会社より絶対にはるかに信用できる。

 情報漏洩のリスクが「人間」だけではないのは当たり前だが、しかし「人間」こそが最大のリスクであるのはほぼ常識だろう。

 その「人間リスク」の中でも、飲酒・泥酔というのはかなりのウェイトを占めている。

 それがすっかりなくなるのは、どう考えても信頼度の向上である。

 そしてまた、全く飲酒しないとか、仕事帰りには決して飲まない(と誓約する)人だけを集めるというのは、さして難しくないことだと思う。

 飲酒しない人だけで構成された機密情報取扱い企業は、そうでない機密情報取扱い企業より信用できる。

 明らかにリスクファクターが他の企業より少ないのだから、これは当然のことだ。

 おそらくそんな企業は、自社社員の給料を他の企業より(月々数万円くらい)高くすることだってできるだろう。

 それだけの価値はあるだろう。


 ハッキリ言って、そこの社員が喫煙者であるかどうかなんて、顧客には全くどうでもいい、箸にも棒にもかからないしょうもないことである。

 しかし、そこの社員が飲酒者であるかどうかは、顧客に重大な実益がある。

 今回の事件を見れば、これは明々白々である。

 さて、時流に乗って「喫煙者は採用しません」と言うことは誰にもできるが……

 はたして「飲酒する人は採用しません」と宣言するブレイクスルー企業は、出てくるものだろうか?