2月27日、厚生労働省は2023年の国内における出生数(速報値。日本生まれの外国人を含む)が、過去最少の75万8,631人(前年比5.1%減)だったと発表した。
この「過去最少」記録は、8年連続の更新となる。
また婚姻件数の方も前年比5.9%減の48万9,281組で、90年ぶりに50万組を下回ったそうだ。
(⇒ 読売新聞 2024年2月27日記事:想定を10年近く上回る少子化、昨年の出生数は8年連続で最少更新…死亡数は最多更新)
さて、この加速する少子化と人口減少の原因が「未婚化・非婚化」にあるとするのは、もう日本中の定説みたいなものになっている。
しかしさらにその未婚化非婚化の原因はとなると諸説入り乱れ、その中で最有力候補と言えるのは「若者の経済力不足説(低賃金説)」だろう。
そりゃ給料がこんなに低いし上がらないのに、恋愛・結婚・子育てなんて(やりたくても)できるわけがない――
というのは、なるほど説得力がありそうだ。
しかし私は(何度も書いてはいるのだが)、それが本当に最大の原因になっているとは思わない。
私が最大の原因だと思うのは、むろん「国民(若年層国民)の意識」である。
今の若い人たちは、いや中年層のかなりの部分は既に昔から、「恋愛・結婚・子育てなんて、むしろやりたくない」と思っているのではないだろうか。
早い話が、あなたは次の考え方をどう思うだろう。
●そもそも人と付き合うのがメンドくさい、ウンザリだ。そういうのは職場だけで十分。
●仕事が終わった後は一人で自由に楽しみたい。
●休日は一人で好きなことをしたい。わざわざ他人と「合わせて」過ごしたくない。
●仕事して家に帰ってから、今度は「家の仕事」なんかするなんて真っ平御免。
●仕事後も休日も「自分の時間」を過ごしたいのであって、それを邪魔されたくない。
●そもそも子育てとか家の仕事とかいう苦労や気苦労を、進んで背負い込むような元気はない。(そんなことする気が知れない)
私にはこれ、実に無理もない考え方のように感じられる。
何なら「そう思わない」という方が、よほどどうかしているのではないかとさえ思う。
少なくとも、こんな考え方をする人たちを「まともでない」とか「不健全」とか、そんな風には全然思わない。
いや、これこそがまっとうな考え方であるくらいではなかろうか。
(⇒ 2016年4月26日記事:労働時間の短縮…少子化を防ぐ最も現実的で、最も非現実的な手段)
(⇒ 2023年3月19日記事:もうすぐ「結婚するのは変わった人」になる説)
これは、十分に可能性のあることだと思うが――
今後、恋愛・結婚・子育てする人というのは同世代の中で少数派になる、即ち男女とも「2人に1人以上は生涯無恋愛・無結婚・無子」になるのではなかろうか。
つまりそんなことする人の方が少数派になり、むしろ「変わり者」と見られる日も遠くはあるまい。
カネがあろうがなかろうが、上記に挙げた考え方――恋愛・結婚・子育てというリスクを自ら選び取ろうなんてまともじゃないという考え方――を、過半数の人が常識として持つだろうからだ。
こういうことを政治の力とか経済成長とかで反転させようとするのは、まず的外れとしか言いようがない。
もし反転させる方法があるとすれば、それは「結婚しない人をあからさまにバカにする」文化を作り上げる(再興する?)ことくらいだろう。
しかしもちろん、現今の雰囲気でそんなことができるわけがない。
となると我々が「出生率の回復」を見るのは、同世代の中にどれだけの「変わり者」が残るか、その下限に行き当たった時だろう。
私としては、「同世代の2割から3割」くらいは、こうした変わり者が頑固に残るのではないかと思うのだが……