プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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東名あおり運転致死傷被告「俺が出るまで待っとけよ」-裁判官への復讐殺人はあったのか?

 2月26日、東京高裁は、あの「東名高速道路あおり運転致死傷」男(32歳)に懲役18年の地裁判決を支持する判決を下した。

 男は最後に、「俺が(刑務所を)出るまで待っとけよ」と裁判官に捨て台詞を吐いて退廷したそうである。

 まあ、この男をクズ中のクズ、更生の余地なき劣悪人間とみなすのが、大多数の人の普通の感覚だろう。

 しかしそれはそれとして気になるのは、この「裁判官への復讐・お礼参りの予告」というやつである。

 これは果たして、今まで発生したことがあるのだろうか。

 思えば明治初年以来、いったい何万・何十万の裁判がこの日本で行われてきたかわからない。

 その裁判の当事者――ここでは敗訴した側に限って考えてみよう――の中には、今で言うマジキチみたいな人が何百人・何千人といたはずである。

 自分に不利な判決を下した裁判官を死ぬほど恨んだ人(土地の境界紛争ですらそういう心情は生じ得る)は、百人程度では収まらないはずである。

 にも関わらずあなたは、ある事件に判決を下した裁判官が、出所してきた(または民事裁判で敗訴した)人間に復讐殺人されたという例を思い出すことができるだろうか。

 私は寡聞にして、そのような例を知らない。

 殺人までとはいかずとも「嫌がらせ」くらいはされた例があるだろうとは思うのだが、それすら聞かない。

 もしこれが「暗黙の報道自粛協定」か何かで「実は発生しているのだが報道されていない」というなら話は別だが、どうもそんなこともない気がする。

 もし今回の被告が本当に18年後に(これには未決拘留期間が算入されるので、実際にはもっと短くなるらしい)世に出てきて裁判官への復讐を実行したならば、それはもしかして日本史上初の例になるのではなかろうか。

 いや、この裁判官への復讐殺人というやつ、日本どころか海外の例すら聞くことがないのだから、ひょっとすると「世界史上数十年ぶり、数百年ぶり」とかいうことになるのだろうか。

 (さすがに古代まで遡れば、こういう例はあったはずである。)


 もしそんなことが実際に生じれば、それは司法や刑法に影響するところ大だろう。

 いや、そういうことでもない限り、「加害者に甘い」ともっぱらの評判である日本の裁判や法律はなかなか変わらない、と言うべきか。

 もっともこんな捨て台詞を吐いた以上、この被告が懲役を務めて出所した後、警察は彼をマークしないわけにはいかないだろう。

 しかしもちろん、24時間監視できるわけでもないだろう。

 いわば今回の件は、十数年後の時限爆弾を埋め込んだとも言えるだろうか……