プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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同性婚禁止が違憲だとすれば、近親婚と重婚の禁止も違憲ではないか?

 6月20日、大阪地裁は「日本で同性婚が認められていないのは違憲ではない」との判決を下した。

 昨年3月の札幌地裁では違憲判決が下っていたので、同性婚賛成派にとっては逆転敗訴の形である。

(⇒ 朝日新聞 2022年6月20日記事:同性婚を認めないのは「合憲」 原告側の賠償請求を棄却 大阪地裁)

(⇒ 朝日新聞 2022年6月20日記事:同性婚を認めないのは「合憲」 大阪地裁の判決要旨は)


 まず断っておくと、私は同性婚は認めてよいし、いずれ日本でも認められるだろうと思っている。

 確かに「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項には「両性の合意」とか「夫婦」とかの文言が使われているが――

 「両性」とは「男と女」でなく「二つの性が揃ってればいい」と解釈できるし、

 「夫婦」は「今でいう〝パートナー同士〟という意味を、憲法制定当時の言葉で表現した一つの例示に過ぎない」と解することが可能である。

 だいたい憲法9条には「日本は戦争を放棄する。陸・海・空の戦力はこれを保持しない」と明記してあるのに、堂々と自衛隊が存在する。

 それは「自衛隊は戦力ではない」という、嘘八百の失笑タワゴト解釈によるものである。

 いくらなんでも自衛隊が陸・海・空の戦力ではないなんて、まともな人間が真面目な顔で言えることではないはずだが――

 しかし現に、そんな解釈が通説として真面目にまかり通っている。

 だったら「両性」や「夫婦」には男同士・女同士も含まれるのだと解釈するのは、むしろ法律家にとって朝メシ前の解釈とは言えまいか。

 
 さて、しかし――

 同性婚禁止を違憲であるとする場合、どうにも難しい事態に直面するのだ。

 それは、同性婚禁止が違憲なのなら、近親婚の禁止や重婚の禁止だって婚姻の自由を妨げるから違憲になるのではないか、という至極ナチュラルな疑問である。

 なぜ、母と息子が結婚してはいけないか。

 なぜ、兄と妹が結婚してはいけないか。

 なぜ、前婚の子と後婚の子は結婚してはいけないか。

 なぜ、一夫多妻や一妻多夫は認められないか。

 これに対して同性婚推進派は、「おぞましいから」「人の道に反するから」などとは口が裂けても言えない。

 なぜならそれは、まさに同性婚・同性愛にこそずっと向けられてきた言葉であり、今でも向けている人は多いからだ。 

 一夫多妻や一妻多夫は、当人たち同士が合意しているならいいのではないか。

 「つまらぬ男の妻になるより一流の男の妾になりなさい」というようなタイトルの本もあったが、当人同士がそれでいいなら認めて何の不都合があるか。
 
 近親相姦は遺伝的疾患が子どもに生じるからダメだ、と言うならば、遺伝的疾患を抱えている人の婚姻と出産も禁止すべきだということにならないか。

 はたしてあなたは、同性婚の禁止はけしからんのに近親婚と重婚の禁止は続けるべきだ、とする説得力ある主張ができるか。

(そしてもちろん憲法は、近親婚と重婚を禁じてはいない。それを禁じるほのめかしさえない。)


 これは全くの推測だが、裁判官の中にも「同性婚を合憲と認めたら、近親婚と重婚も合憲にせざるを得ないのではないか」と「おそれて」いる人がいるのではないか。

 そして予測するが、いずれ同性婚が合憲と認められたなら、今度は近親婚と重婚も認めるべきだという人たちが違憲訴訟を始めるだろう。

 そのとき裁判所が、どういう理屈でそれらの禁止を違憲でないと言いくるめるのか――

 これはまさに、注目の判決になることだろう。