2月27日現在、ウクライナに侵攻したロシア軍はいまだ首都キエフを落とせていない。
首都に留まり徹底抗戦を宣言した大統領ゼレンスキーをはじめ、閣僚たちの行うツイッター・動画配信戦術も止めることができていない。
それどころか第2の都市ハリコフでは、ロシア軍が撃退されたという(ウクライナ軍発表だが)ニュースまで出る始末である。
私は常々、ロシア軍の強さというのに疑いを持ってきたものである。
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しかしさすがにこの戦争が始まったときは、「いくらなんでも」ウクライナの防空システムは一日目で破壊されるだろうと思っていた。
ロシア国境にほど近いハリコフなんて、すぐに陥落するだろう――
無抵抗の開城さえあり得るだろうと思っていた。
ところが、このていたらくである。
開戦4日目でハリコフも落とせないと言って責めるのは酷かもしれないが、しかしロシア軍としてはそれくらいの計画は立てていたと思う。
ロシアの軍事力とウクライナのそれでは大人と子ども、いや巨人と子どもくらいの違いがあると言われていたが、それでもこうなのだ。
我々はやはり、ロシア軍の実力を過大評価しているのではないだろうか。
そして、もう一つ思うのは――
「21世紀にこんな露骨な侵略戦争が行われるなんて信じられない」と言われるこの戦争――
まさに21世紀の主権国家・領土大国同士の戦争が、ぜんぜんハイテク戦争という雰囲気じゃないことである。
21世紀の戦争って、もっとこう無人機攻撃機が宙を舞うとか軍事ロボットが地を駆けるとか、そんなイメージじゃなかったろうか。
それがなんだか、SNSの存在を除けば旧態依然の古めかしい「20世紀の戦争」に見えるのは、私の目が節穴だからだろうか。
それどころかウクライナ側に至っては「市民に武器を配っての民兵」、そして「ロシア兵と違って士気が高い」というようなことがクローズアップされているのだ。
何なら30年前の湾岸戦争の方が、はるかにハイテク戦のイメージがあった――
そう思うのは、私だけではないと信ずる。
そこで思うのは、ハイテクだドローンだ軍事ロボットだ、電子戦だサイバー戦だとは言っても、
いまだに「戦争は人間のもの」だということである。
この21世紀の戦争、しかも(名前のみ高いのかもしれないが)天下のロシア軍相手の地上戦で、「民兵・士気」というものがクローズアップされるのだ。
そして首都に留まるゼレンスキー大統領の自撮り映像の配信は、国内の士気と国際世論を確かに高めていると思われる。
なんとなんと、通信・ネット回線のハッキングなどという「いかにも高度なサイバー戦」より、
「SNSで自撮り配信」という誰でもできそうなサイバー戦(これもサイバー戦の一種だろう)の方が、
よほど効果を上げているようにさえ見える。
21世紀の戦争、少なくとも2020年代の戦争とは、まだまだ機械のではなく人間のものだったのだ。
しかし、それにしても――
キエフとハリコフの激戦と言えば、否応なく独ソ戦を思い出させる。
そしてようやくドイツは方針を転換し、歩兵用の対戦車ロケット弾「パンツァーファウスト3」をウクライナに支援するという。
あの独ソ戦で登場した歴史的有名兵器のパンツァーファウストの最新版が、80年の時を経て再びウクライナでロシア軍と対決する……
独ソ戦に触れたことのある人でこれに感慨を抱かない人は、いないのではあるまいか。