5月19日から21日まで行われたG7広島サミットが、終幕した。
しかし何と言ってもこのサミットのハイライトは、ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃参加である。
この一つで、このサミットは「ゼレンスキーサミット」となってしまった観がある。
それにしても、誰もが思うことだと思うのだが……
ウクライナは、核保有国で元超大国のロシアに攻め込まれている側である。
その大統領が、はるばる広島まで来る。いや、来れる。
これだけでも(ウクライナ戦争について何も知らない人でも)ロシアの侵攻が順調でなく、ウクライナにはある種の「余裕」があることを感じさせるには十分だ。
普通こんな苦境にある「まさに侵略を受けている国」の最高指導者というのは、首都か地下要塞にこもりきって防戦にかかりきりというのが一般のイメージだろう。
とてもとても、外遊に出て行くなんてイメージはない。
もっともこれは、いまや「古い」イメージなのかもしれない。
我々はつい、敗戦間近なナチスのヒトラーをイメージしてしまうのかもしれない。
思えば最高指導者が首都にずっととどまって戦争を指揮するというのは、防戦側にとってそれほどいいことばかりではない。
それこそヒトラーのように、戦場の細かなところに口を突っ込んで要らぬ指示をされるより――
外国をめぐって支持を取り付けたり自国のアピールをする方が、よほど最高指導者のすべきこととして有益なのかもしれない。
またこれは、まさに軍隊にはできない、最高指導者にしかできないことでもあるだろう。
さて、ここで言及しなくてはならないのは、議長国(開催国)日本の岸田首相の外交についてである。
岸田首相は、かねてから「外交の岸田」と呼ばれてきた。
これには「外交が得意」という意味と、「外交だけは少々できる」という揶揄的な意味もあるのだろう。
しかし今の世界の外交の焦点は、疑いなくウクライナである。
そのウクライナについては、岸田首相は確かに「外交の岸田」の評判にたがわぬ手腕を発揮しているとは思うのだ。
ただ、ウクライナ電撃訪問の際ゼレンスキー大統領に宮島の「必勝しゃもじ」を贈呈したというのは、今でも「ズッコケエピソード」に感じられるのだが……
今回また岸田首相はゼレンスキー大統領に会ったわけだが、「あの時のしゃもじはどうしてますか?」と聞いただろうか。
そうしたらゼレンスキー大統領はどんな顔をしたものだろうか……(笑)
(⇒ 2023年3月21日記事:岸田首相キーウ電撃訪問・図らずも最高タイミング?)
(⇒ 2023年3月23日記事:岸田首相、ウクライナに「必勝しゃもじ」贈る……笑笑笑)
それはさておき今回のG7サミットは、「成功」の部類だったと思う。
何をもって成功と言うべきかは誰にもわからないことなのだろうが、一応、開催するだけの意義はあっただろう。
しかし、成功・失敗とは別次元の意義というのは――
ますますG7という枠組みが、中国とロシアをツートップとする「権威主義」陣営(いつしか、こういう言い方が世の中に定着した)と対立する枠組みになったという色合いを濃くしたことだろう。
これはまるで、信長包囲網ならぬ権威主義陣営包囲網、反権威主義連合とも言うべきだろうか。
おりしも5月21日、ウクライナ東部要衝のバフムトが陥落したと――制圧したと、ロシアは発表した。
この戦争では弱いショボいと言われどおしのロシア軍も、さすがにイチコロで倒せるような相手ではない。