中国の新聞『中国青年報』の行ったアンケート調査結果というのは、人によっては爆笑ものである。
なんでも
●中国の若者たちの最大の悩みは、男女を問わず「恋愛の仕方が分からない」ということが判明。
●調査対象者(23歳から38歳の独身男女)の大半は、交友関係が狭く、家にこもるのを好み、異性との交際経験がなく、他人と気さくに話すのが苦手。
その結果、恋愛のチャンスがほとんどなく、親から結婚のことを聞かれても答えられず、1人で悶々としている。
ということらしい。
(⇒ NEWSポストセブン 2023年9月2日記事:中国青年報、中国の若者の最大の悩みは「恋愛の仕方が分からない」 党や大学の助けを求める声も多数)
爆笑ものだというのは、これが日本の調査結果だとしても何の違和感もないことだ。
いや、日本で同じ調査をしても、これとほとんど変わらぬ結果になるだろうことを予想しない人はいないはずだ。
全く近年、世界の中でも特に出生率低下と未婚率上昇が著しいとされる東アジア地域であるが――
このブログでは何度も言っているとおり、日本人も中国人も(たぶん韓国人も)同じ東アジア人として実に似た者同士だと思わざるを得ない。
日本人はだいたい中国人を嫌うか警戒し、
中国人は日本の原発処理水放出に対して(何の関係もないところへ)迷惑電話をかけてくるのであるが――
なんだかこの「恋愛無能」の共通性を見ると、むしろ両国人民に連帯感さえ湧いてきそうではないか。
そして今回のアンケート結果で目を引くのは、この中国若者の恋愛困難について、当の中国若者は次のように回答していることだ。
●約60%が、中国共産党傘下の青年組織である中国共産主義青年団(共青団)などで男女の交流イベントを開催してほしい。
●約50%が、大学に「恋愛課」を開設して交際に至る手助けをしてほしい。
もうこれは、第2の爆笑と言っていいだろう。
あからさまというか何というか、よくもまあこんなこと望む・求めるものだと、思わない人がいるだろうか。
誰もが思うように、たとえこんなこと実施されたって、恋愛できない者はできないのである。
いや、これでも恋愛できない者が大半に上るに違いないのである。
だいたいこんな希望をアンケートに書く人自身が、こんなことされたって自分は恋愛できないだろうとわかっているに違いないのだ(笑)
しかし、もしこんなことを本気で臨んで回答しているとするなら、それは恋愛無能の断末魔ないし成れの果て、としか言いようがない。
なるほど確かに日本人も行政依存で有名であるし、アンケートで「国や自治体にしてほしいこと」の欄があれば、この手の希望は書くかもしれない。
だが中国若者の国(中国の場合は共産党)への依存ぶりは、そんなのよりはるかに深刻なようである。
さて、東アジア圏の少子化・低出生率・非婚化は、しばしば条件反射的に「儒教のせい」「家父長制のせい」とされる。
(⇒ 2023年1月24日記事:諸悪の根源?「昭和」と「儒教」(下)-非婚化・少子化は儒教のせいか)
だがそんなものより重大因子と思われるのは、日本人について非常に昔からテンプレートのように言われてきたごとく――
いわゆる「個の確立」ができていないからではないか、と思わずにいられない。
自分が恋愛できないのは国の支援がないから、それさえあれば希望がある……
なんて考えるのは、まさしく個人主義がなってない者が行きつく考え方ではないか?
そしてどうやら今の中国の若者たちは、日本人の若者以上に個の確立はできてないらしい。
日本人は集団主義で中国人は個人主義、という昔からのテンプレートは、もはや時代遅れのものであるようだ。
似た者同士の日本人と中国人。
日本人が個人主義未達者で国依存なら、中国人はもっと個人主義未達者で国依存。
日本の若者の半分くらいが恋愛無能・無関心なら、中国の若者も半分くらいがやっぱりそう。
これが21世紀前半の、大東亜恋愛困難圏の姿ではあるまいか。
中国と日本は一衣帯水とは、よく言ったものである。
両国の恋愛・結婚・子育ての困難事情には、そっくり同じと言いたいほどの共通性がある。
ここにはまるで、似た者同士のいがみ合いを止め――
むしろ両国人民の(特に若者世代の)連帯感が高まっていくという、皮肉な希望の光さえ見えてくる気がするではないか……