あの知らぬ者のない「ネス湖の怪獣」ネッシーの、半世紀ぶりの大捜索が8月26日・27日に行われる。
今回は赤外線カメラ搭載のドローンで水中の熱画像を撮影し、水中聴音器でネッシーの鳴き声をキャッチするという「新技術の投入」が特徴だという。
(⇒ 時事ドットコム 2023年8月12日記事:ネッシー、半世紀ぶり大捜索 新技術駆使し謎に迫る 英)
しかしケチをつけるようだが、今回もまたネッシーを見つけることはできないだろう。
少なくとも「プレシオサウルス」を見つけることはないのは、大金を賭けても間違いはない。
だいたい前回の1972年の大捜索でさえ、当時の最新テクノロジーくらいは投入していたものだ。
そこでは(ネッシーファンにとっては有名な)、まるでプレシオサウルスの一部であるかのような体の一部と「ヒレ」の撮影に成功しており、当時の少年たちを(たぶん)瞠目させたものである。
だがそれもいつまで経っても何の進展もなく、今はまるで「なかったこと」であるかのようになっている。
いや、そもそもネッシーの話題自体がほとんどなくなり――
「宇宙人と未確認生物」というサブカルチャーの世界では、「グレイ型宇宙人」の方がはるかに世の中に普及することとなった。
しかしそれでも、誰でもネッシーの名を知っている――そして必ず首長流の姿を思い浮かべる――のは、さすがの過去の遺産である。
1970年代を中心として、ネッシーは未確認生物界の王であり、もっと広くは「不思議事象」界のスターであった。
不思議事象界とは、未確認生物界とオカルト界を包含する私の造語である。
「オカルトブーム」というのはまるで2023年の今でも続いているかのような扱われ方をされるが、1970年代は明らかに未確認生物ブームでもあった。
特に日本の未確認生物というのは、ほぼ全て1970年代に「生まれた」と言っても大袈裟ではない。
広島県比婆山中の「類人猿ヒバゴン」なんて、まさにあの時代でなければ生まれなかったのではないか。
そして、それ以上に1970年代でなければ生まれなかったと確信できるのが――
鹿児島県池田湖の「イッシー」、
北海道屈斜路湖の「クッシー」、
などという「和製ネッシー」シリーズである。
これら和製ネッシーも、1970年代のブームの遺産で今でも「生き残っている」――知っている人は知っている――と言っていいだろう。
それ以後の目撃証言はほとんどなく、あったとしても全然大きく報じられない。
かつてプロレスラー天龍源一郎は、「WAR」(ウォーではなくダブリュー・エー・アールと読む)という自分の団体を作った。
それは「レッスル&ロマンス」の頭文字であった。
むろんまずWARの文字があって、後からそれを頭文字にする言葉を考えたのは丸わかりなのであるが……
それでも個人的には、上手い名付け方をしたものだと思うのだ。
1970年代の日本では、不思議事象界がブームであった。
UFOも宇宙人も未確認生物もオカルトも超能力も、当時全盛を極めた。
そのブームは終わったが、今もロマンスの方は残っている。
UFOや今回のネッシーの記事がネットに乗ると、ほとんど決まってアクセス上衣にランクインするからである。
まさにこれは、「ブーム&ロマンス」、BAR……
たとえみんな「そんなのいないだろ、常識的に」と思っていても、「今回もどうせ見つからないだろ」と冷めた目で思っていても、それでも多くの人の心から好奇心とロマンスはまだ消えていない。
ありがちな言い方ではあるが、チュパカブラとかはともかくとして――
ネッシーもコンガマトもモケーレ・ムベンベも、人々の心の中に「生きている」。
ブームは去ってもロマンスは死なず、とはこのことである。