かつて超有名アクション俳優、今は新田真剣佑(24歳)の父として知られる千葉真一が、8月19日に亡くなった。享年82歳。
しかも死因は、新型コロナによる肺炎の悪化。
これは一昨年の志村けんに次ぐ、大物著名人のコロナ死と言っても過言ではない。
なにせ人気が出るきっかけとなったのは1968(昭和43)年のテレビドラマ『キイハンター』である。
これだけ長く活躍していれば、各世代によって千葉真一への思い出が異なるのも当然だろう。
たぶん海外で名声を博した日本人アクション俳優と言えば、断然この人が嚆矢ではなかろうか。
(そして、いまだ後継者は出ていないのかもしれない……真田広之はそれに近いかもしれないが。)
そしてもう一つ千葉真一と言えば、映画『戦国自衛隊』(1979年)である。
それは、1970年代後半から1980年代に猛威?を振るった、「角川映画」シリーズの一つ。
同じシリーズには、あの『時をかける少女』『天と地と』等がある。
今にして思えば、あれは日本が繁栄の頂点に達した時代を、映画界でも反映していたと言えるかもしれない。
それほど角川映画シリーズというのは、(現代におけるその映画自体の評価は別として)勢いがありまくりだったのである。
さて『戦国自衛隊』であるが――
この映画が傑作であるかどうかという点については、色んな意見があるだろう。
いくら戦車やヘリコプターを装備しているからと言って、たった数名の自衛隊員だけで武田信玄軍の何万人と戦うというのはおかしすぎるじゃないか、
せっかく上杉謙信と同心しているのだから、数千名は付けてもらうのが普通じゃないか……
というのは、誰でも抱く疑問ではある。
しかしこの映画、そういう疑問を差し引いても、やはり名作だと私には感じられるのだ。
(だから今でも、数年に1回は見直してしまう。)
正直この1作だけでも、千葉真一の名は私の中にハッキリ残った。
特に記憶に残るのは、クライマックスの「武田信玄との一騎打ち」で――
千葉真一と武田信玄が刀でさんざんチャンバラをしていながら、最後はピストルのバキューンで信玄を撃ち殺すというあのシーンは、
「ひでぇ」と笑いたくなるのと同時に、妙に脳裏に深く刻みつけられはしないだろうか。
原作にはない自衛隊員同士の「反逆者討伐」を挟み、
武田軍と戦ってズタボロになりながら、
なおいっそう天下取りへの妄執に取り憑かれた千葉真一……
あの自衛隊の隊長役は、素晴らしい演技だったと思う。
あるいはこの人こそ不世出の日本人アクションスターであり、この人の後にこの人なし、と言ってもいい存在だったのかもしれない。
人は誰でも死ぬし、82歳というのは死ぬのにおかしい歳でもない。
しかしそれでも、やはり「自分の記憶に残る人」がこの世からいなくなるのは、痛ましいものである。