10月31日のハロウィンの日、東京都調布市内を走行中の京王宣伝車内で、24歳の男が刃物で乗客に切りつけるほか、可燃物をペットボトルで撒いた上に火を付けて逮捕された。
死者は今のところ出ていないものの、意識不明の重体者は出ている。
さてこの犯人、福岡在住であったが――
大量殺人(最低2人の殺害)を目指し、わざわざ「大勢の人が集まるに違いない」ハロウィンの日を狙って東京に出てきたらしい。
そして殺人の動機は、「仕事や人間関係が上手くいかず、しかし自殺はできないので、人を殺して死刑になろうと思った」とのこと。
この殺人の動機は、別に目新しいものではない。
自分が死刑になりたいから殺人をする、という動機による殺人・殺人未遂事件は、今ではもう「よくあること」の一つになってしまった。
しかしここで何としても思わずにいられないのは、
「殺人までもが東京一極集中なのか」
という感想である。
福岡と言えば、九州第一の都会である。
いや日本有数の、それも元気があると言われている方の街である。
別にハロウィンの日でなくても、街には大勢の人通りがあるだろう。電車だって充分に人が乗っているだろう。
しかしそれでもこの犯人には、物足りなかったらしいのだ。
もう今の日本の若者の意識の中では、「就職するなら東京」どころか「犯罪するなら東京」というのがごく普通になっている――
すなわち、こんなことまで東京一極集中が進んでいることの表れと言っても過言ではなさそうである。
そしてもう一つ、彼はバットマンの悪役「ジョーカー」の仮装をして犯行に及んだ。
彼は言う――
「バットマンの登場人物のジョーカーは平気で人をやっつけていて、それに憧れていた。
この日のためにジョーカーの服を買った。殺せなくて悔しい」
と。
我々は「殺人を扱った映画やテレビやゲームが、それを見る人に影響を与えている。殺人へ駆り立てる要因になっている」という話を、何度となく聞かされてきた。
そして必ず、それに対する反論――というか反発・嘲笑・罵倒――を聞かされてきた。
むしろネット界では、後者の方がはるかに優勢な雰囲気である。
しかしここに、そのどっちの言い分が正しいかの答えが出たのではあるまいか。
すなわち答えは、前者の方が正しいということではあるまいか。
今回の事件は、少なくとも日本では、史上初めて「映画の世界の殺人ヒーロー」に憧れて犯行に及んだ、と犯人がハッキリ表明したケースだと思われる。
そしてこれは氷山の一角であって、本当は今までにあった夥しい暴力犯罪の犯人は、実は映画や漫画やゲームの中の「殺人ヒロイックファンタジー」に影響されていた・いるのではなかろうか。
なんたって世の中では、
「芸能人やYouTuberの言動にすぐ影響される人」が何万人・何十万人もいるのである。
みんなそれを知っていて、べつだん不思議とも感じていないのである。
それなのに殺人アクションゲームや殺人ヒーロー映画が人に影響を及ぼしていないなんて、そんな超常現象めいたことがあるわけがない。
だからそんなコンテンツは規制すべきだ、ということにはならないが――
それはやはり、「影響はある」ということを認めてから初めて議論できることではないだろうか。