プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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「二次元キャラと結婚」を日本メディアは是と認めた-人工彼氏彼女の時代

 5月12日、TBSの番組「news23」の特集コーナーで放送されたのは、「二次元キャラ・初音ミクと結婚した(2人の)男性」であった。

(⇒ TBS NEWS DIG 2023年5月13日記事:初音ミクと“結婚”した男性「母と妹に理解してもらえなかった」なぜ結婚したのか?結婚生活は?【news23】)


 この2人、39歳の男性の方は2018年に実際に結婚式場で結婚式を挙げている。

 動画を見ると、出席者はまずまず多い。

(しかし、母と妹はこんなことを理解せず出席せず。)

 

 58歳(の会社経営者)の方は車椅子に初音ミクの人形を乗せて外出し、パスタ店に行って食事をする。

(ちゃんと2人前注文して自分1人で完食する。)

 

 公園へ行き、桜の花をバックにミクの写真を撮る。

 ああ、実際に出席者を招いての結婚式にせよ、ミクを連れての外出にせよ――

 たとえどれだけ初音ミクのことが大好きだろうと、私にはとてもそんなことをする度胸はない。

 これは、ほとんどの人が同じだろう。

 しかし動画を見る限り、このお二人とも「いい人」のようである。

 しかも二次元キャラとの「結婚証明書」(を作っている会社がある)の発行枚数は現時点で200枚を超え、その9割が女性だという。


 確かにこの「現象」については、思うことが多くある。

 結婚証明書の発行って版権的に大丈夫なのか、もしディズニーキャラだったらタダでは済まないのではないか、とか。

 ミクを連れて飲食店へ行くって、取材映像では「他に客が誰もいない」状態だったが、いつもそうとは限らないのではないか、とか。

 結婚証明書交付申請者の9割は女性とのことで、たぶんその大部分は「グッズ」の一つとしてそれを求めているのではないかと思われるが、しかしそうでない「ガチ勢」の方もぜひ取材してほしい、とか。

 そして我ながらゲスな想像ではあるが、性生活はどうなっているのか、とか――

 しかし決定的なことと思えるのは、TBSのnews23という番組が、この現象を「是」としたことである。

 小川彩佳キャスターは最後に、

「私たちも枠内で自分の幸せをどう追求していくかやりくりしてるような気がするんですけれども。

 その枠を1回取っ払って、自分の幸せというのをひたすらに追求したときの表情ってこんなにいいものになるっていうことを改めて学ばせてもらった気持ちです」

 と言っている。

 いやぁキャスターも大変だなぁ……と思う人は多いだろうが、小川キャスターは「学ばせてもらった」とまで言っている。

 決して二次元キャラとの結婚を、面白おかしいとか異常視するスタンスではなく、それとは真逆に「受容」している。
 
 そう、LGBTQといった「多様な性」を是認・推進する限り、二次元キャラとの結婚を茶化したり病理扱いするわけにはいかない――少なくとも人前では――のだ。


 ほんの少し前までは、二次元キャラとこんな風になるなんて、完全に異常者・変質者扱いであった。

 いや、「これは精神病の一種」と言われれば、誰もが納得していたろう。

 しかし、TBSのニュース番組という「公的メディア」がこんなことを是認したのだから――

 もうこれは日本では、変質者の変質行動とか精神病者の哀しき症状と受け取ったり表明するわけにはいかなくなった。

 そうなると気になるのは、海外ではどうなのかということである。

 アメリカ精神医学会ではDSM-5(精神障害の診断統計マニュアル第5版)をいうものを発行しているが、次の版ではこういうことは精神病の一種として扱われなくなるのだろうか。

 いや、精神病として扱うことが(政治的・感情的に)許されなくなるのだろうか。

 
 何にせよ、少なくとも日本では

「二次元キャラとの結婚」

「人形をあたかも本物の人間であるかのように、配偶者として生活する」

「おそらくはメディアの取材を受けた時だけでなく、一人きりの日常の中でもそうする」

 ということがメディアに公認されたことは大きい。

 これなら近い将来必ず出現する「AI搭載の人型ロボット・アンドロイド」と、本物の人間たちが恋愛・結婚をする道は大きく開かれたと言っていいだろう。

 容姿も性格も自分の理想にカスタマイズできる人工彼氏・彼女に対して、本物の人間男女に勝ち目はない。

 性生活もきっと問題ないように製造することができるだろうし、

 子どもの方は、自分の精子卵子を専門会社に送ることで(優秀者の精子卵子と掛け合わせることで)理想のタイプに作ってもらうことができるだろう。
 
 そういう時代は、それが常識となる時代は目前に迫っていると考えるのは、あまりにSFチックだろうか。

 しかしそんな時代から過去を振り返れば、

「昔の人はよく赤の他人とくっついて、デタラメな出たとこ勝負の結婚とか子作りとかしてたもんだ」

 とか思うに違いないだろう……