引き続き、同性婚容認（法制化）の話である。
繰り返し念のため、私は同性婚容認に賛成である。
しかしこれも繰り返すが、同性婚を容認するなら近親婚を容認する理由はなくなる。
従って同性婚を容認するなら、近親婚も受け入れるのが当然の帰結となる。
（⇒ 2022年6月18日記事：同性婚禁止が違憲だとすれば、近親婚と重婚の禁止も違憲ではないか？）
世の中には「同性婚を認めないのは遅れた連中」と言わんばかりの鼻息荒い発言が多数であるが、その人たちのうち何人がそんな「覚悟」を持っているだろうか。
もし同性婚容認に賛成しておいて近親婚容認には賛成しない、と言うのならその理由が必要なのだが、あなたにはその理由が考えつくか。
「人が人と愛し合うことの何が悪い」
「同性婚を認めたからといって、同性婚しない人には今までどおりの毎日が続くだけ」
「当人同士の願いを認めないのは人権無視」
同性婚を容認せんとするこれらの主張は、全て完璧に近親婚の容認にも当てはまる。
そして、近親婚なんて
「おぞましすぎる」
「それはあまりにも極少数派」
なんて言うことも、同性婚容認の立場からは許されないはずだ。
おぞましいとかごくごく少数だとか、そんなのはまさに同性婚・同性愛自体がさんざん世の中から言われてきたことではないか？
おそらく、同性婚は容認するが近親婚は容認しないという主張の唯一の根拠となりそうなのは、
「近親婚は子どもが障碍者になる確率が非常に高い」
ということだろう。
しかしこれも、じゃあ先天性障碍者同士の結婚をあなたは認めないんですか、と反問されればたちどころに砕け散る。
そんなことを公然と主張できる「度胸」は、ほとんどの人が持っていない。
そして、加うるに近親婚の容認には、明らかに実益と実需がある。
たとえばここに、姉と妹がいるとする。
不幸にもこの2人は共に、「結婚したいけどできない」人である。
これはただの仮定ではなく、こんな兄妹・姉弟は日本中に何組もいるはずだ。
ではこの2人の末路はどうなるかというと、それは「絶家」すなわち家が絶えることである。
これを何としても回避するには、近親婚を認めるしかないのではないか。
もしこの2人が愛し合っているとするなら、なおさらではないか。
あなたはそれに断固として反対し、この2人を「見捨てる」のだろうか。
家系存続の「願いを認めない」のだろうか。
そんなことする権利が、あなたや社会（つまり、赤の他人）にあるのだろうか。
私にはこれは切実で切迫した願い、同性愛者の同性婚容認に勝るとも劣らぬ必要性があると感じるのだが、
そして同性婚を認めて近親婚を認めない理由はないと思えるのだが、あなたはどう思うか。
むろんこれについて、近親婚してまで家の存続を願うのは「悪しきイエ意識」に基づくもので認められない、
そんなことするくらいならあえて家系断絶すべし、甘んじて受け入れよ、という立場はあり得る。
しかし私は、それを無道無慈悲な立場だと思うのだ。
だいいちイエ意識と言うならば、例の夫婦強制同姓制……
「女が元々の姓を夫の姓に変えなければならない」制度に対する反発もまた、「21世紀の新たなイエ意識」と言えまいか。
女性が結婚により元々の姓を変えるのを「アイデンティティを奪われる」ものと感じるのは、明らかに実家への帰属を重んじるイエ意識ではないか。
そのイエ意識は支持するのに、家系存続というずっと重大なイエ意識を排撃するのは、筋が通らないのではないか。
（ちなみに私は、夫婦別姓にも賛成である。）
言うまでもないことだが、大昔から世界中のあらゆる民族部族・文化・宗教が、近親婚を断固として禁止してきた。
（その禁止の範囲は、かなり異同があるのだが……）
もし日本が近親婚を法的に容認すれば、それこそ「異次元の人権擁護」、異例で異常な国だという世界的評価を受けることにもなるだろう。
しかし理屈上、同性婚を容認するなら近親婚も（そして重婚も）容認しない理由はない。
その意味で近親婚を認めた日本は、理屈に忠実なぶっちぎりの人権先進国になれるとも言える。
おそらく歴史上はじめて日本は欧米に対し、
「オマエらはまだヌルい、遅れてる」
「人権への、人間の願いへの配慮が足りん」
と言える立場になる。
はて、皆さん、なぜ同性婚は良くて近親婚と重婚はダメなのか。
バカにされる感情論でなく論理的に、なぜダメなのか説明できるか。
これは宗教的背景がない限り、至難の業だと思うのだが……
