もちろん、「恋愛相手や結婚相手をマッチングアプリで探す、しかも政府がそれを後押しする」なんて世も末だ、情けない……なんていう感想を持つ人も多いだろう。
というか今は、そういう人の方がはるかに多いだろう。
しかし私は、これをいいことだと思うのである。
こんなのが昔から普及していれば、救われた人は何百万人・何千万人もいたと思うのである。
それというのも子どもの頃から、こんなことを感じていたからだ。
即ち、
「たかが自分の行動範囲の中でたまたま出会った人が自分のベストパートナーであるなんて、ありえないことではないか」
という感想である。
たかが自分の行動範囲の中で直接出会う人の中から、自分に本当にピッタリな「運命の人」を見つけ出す――
これは全く見込みのない、無謀な試みではないだろうか。
そんなことで自分の生涯の伴侶を探そうなんて、見つかると思うなんて、
それで見つけた人が本当に自分のベストパートナーであると信じるなんて、
これはもう科学ではなく信仰の世界ではないか?
そしてその信仰が、いかにしばしば不幸に至っていることか。
そういう信仰に基づいて結婚した人の多くが離婚し、
離婚しなくても「夫の顔など見るのもイヤ」な妻を何十万人も生み出している。
こういうことはAI婚活・AI婚の普及により、(ゼロにはならないとしても)激減させられるのではないだろうか。
私はAI婚活を、県や市といった単位ではなく、日本全国を一単位として進めた方がいいのではないかと思う。
いや、なんなら世界規模にすべきだと思う。
言うまでもないが、登録母数が増えれば増えるほど、自分にベストマッチする人間を見つける確率は格段に高くなるからである。
これに比べれば、従来型の「たまたま・行き当たりばったり」式の恋愛・結婚というのは、憐れむほどに原始的でデタラメなものだったということになるだろう。
あなたはきっと、「昔の人間は親に言われるままの相手と結婚していた」ということに、「ひどい時代だ、可哀想だ」という感想を持っているだろう。
それと同じで未来の人間は、AI婚活のなかった時代の恋愛・結婚というものについて、「なんて遅れた非科学的」「そんなので結婚してたなんて信じられない」という感想を持つはずである。
今はまだ多くの人が、「AI婚活だのマッチングアプリで結婚する人は情けない」と、憐みと蔑みの心を持っているかもしれない。
しかし近いうちそれは逆転し、「AI婚活で結婚相手を探さない人はバカ」と、変わり者扱いされる時代が来るように思う。
それは今現在「親の言う相手と結婚した」という人がいたとして、そういう人が憐みと蔑みの目で見られるのと同じ、時代の流れというものである。
繰り返しになるが、「この自分の行動範囲の中でベストパートナーを見つける」というのは、誰でも不可能とわかることである。
それは、絶対この人しか愛せないと信じた相手と離婚する人が、嫌になる人が、いかに多いか――
それだけで立証されているとは言えまいか。
まだ黎明期であるAI婚活(自治体AI婚活)が、すでに顕著な成果を出しつつある……
ということは、AIの技術と精度がさらに向上すれば、いっそう大きな成果を生み出すことになるだろう。
いずれ日本人の(そして先進国の)恋愛と結婚は、AIを通してのものが主流になる。当たり前になる。
そう予想しても、まずは外れはなさそうだ。
そしてこれしか現実的・即効的な未婚率上昇阻止の手段はないと思うのだが、いかがだろうか。