プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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日本保守党百田尚樹「30過ぎたら子宮摘出」発言-全く逆のSF提案「60過ぎても子が産める」世界へ

 11月8日、日本保守党の百田尚樹党首は、自身のYouTube番組「ニュースあさ8時!」(パーソナリティは仲間の有本香 氏)で、「SFたとえ話」として少子化問題への対案を発言した。

 その「こうすればいいって言ってるわけじゃない」という提案とは、

(1) 女性はもう18歳から大学に行かせない

(2) 25歳を超えて結婚せず独身の場合は、生涯結婚できない法律にする

(3) 30歳を超えたら子宮摘出手術をする

 というものであった。

 もちろん案の定に大批判を浴び、百田党首は翌9日にXへ謝罪文句をポストした。

 それは

●「やってはいけないこと」「あくまでS」という前置きをくどいくらい言った上での「ディストピア的喩え」ではありましたが、私の表現のドギツさは否めないものがありました。不快に思われた人に謝罪します。

●メディア、こぞって「切り取り」! おそらく記者は誰も発言の全部を見てないんやろうな。

 というものであった。

(⇒ 2024年11月10日記事:日本保守党・百田尚樹代表が少子化対策で過激発言 批判続出に「私の表現のドギツさは否めない」)


 さて、私はこのSF提案を知って、2つのことを反射的に思ったのである。

 一つはむろん、なぜ女だけにこんな提案をするのだろうかということだ。

 女に対してこうするのなら、男に対しても(2)にすればいいのではないか。

 それとも百田党首は、言外にそう言ってもいるのだろうか(しかし文脈からは、やはり女に対してだけの提案のようだ)。

 そして(3)についても、女が子宮摘出なら「30歳を超えて結婚する気がない男、結婚する気配がない男は生殖器を切断する」くらいの提案は普通に出てきそうなものだ。

 なのにそれはなぜ、提案しないのだろうか。

 もちろんその理由の中には、「男は何歳になっても女に子を孕ませることができるから」という客観的事実の根拠がある(と、心の中でなっている)のかもしれない。

 しかし、こうも一方的に女性に対してのみの「提案」「処置」が出てくるばかりなのは不審である。

 最低でも男性に対しても、「30歳を過ぎて結婚しないなら独身税をかける」くらいの提案は口走るのが自然ではあるまいか。

 それとももしかして百田党首はやはり、日本保守党の「支持基盤に配慮」したとかいうことなのだろうか……(笑)


 そしてもう一つ思ったのは、これがSF的ディストピア的提案だというのなら、私にはこれと全く逆のSF的提案があるなぁ、ということだ。

 それは30歳過ぎたら子宮摘出するどころか、「60歳でも70歳でも子が産める」よう人体改造することである。

 いや、別に子宮がなくても(自分の腹から産まなくても)子どもを産み育てることができるテクノロジーを普及させることである。

 思うに、この提案の実現性は、百田党首の提案に1万倍すると思う。

 百田党首の提案には全く需要がない――女性も男性の大半もそんなことは望まない――のに比べ、

 「いくつになっても、歳をとってからこそ子を持ちたい」という希望には大いに需要があるに違いないからである。

 私には世の女性たちが、子宮摘出手術を強制的に受けさせられることを望むなんて思えない。

 たぶん、わざわざそんなことを望む人は一人もいないだろう。

 しかし、老境になって――仕事のキャリアを十分積んだと思える後になって――初めて強烈に心から「やっぱり自分の子を持ちたい」と望む女性は、何万人・何十万人もいると思う。

 そしてごく単純に考えて、30歳を超えた女性が子どもを産む可能性をゼロにするより、60歳でも子どもを産める社会にする方が、はるかに少子化改善に貢献するのはわかりきったことだと思うのだ。

 しかもこれは、決してSF的(つまり空想的)な話に留まらないと思う。

 需要あるところ、必ず供給あり。

 いずれ人類は超高齢出産も、それでも障害を持って生まれない子どもを生み出すテクノロジーを実用化するに違いない。

 そしていずれ、このテクノロジーを利用する女性たちは大いに増えるはずである。

 そうなれば女性たちは問題なく大学へ行ってよく、キャリアも財産も積んで「もういいかな」と思える段階まで結婚を遅らせることができる。

 まあ、これがユートピアと呼べるものかはともかくとして――

 少なくとも子宮摘出処置よりは、ずっと現実的で効果的なSF少子化対策だと思うのである。