7月8日の安倍晋三元首相の白昼暗殺事件は、本当に鮮烈な事件であった。
何が鮮烈かと言って、あの(旧)統一教会が、突如として事件の原因として急浮上したからである。
私の記憶では、1980年代から90年代にかけて、統一教会というのはワイドショーの大スターであった。
統一教会の名など聞いたこともないという人でも、「集団結婚式」というワードは聞いたことがあるのではないか。
その統一教会に母が入信したせいで家が破産し、それから約20年後の今――
安倍元首相が統一教会を応援していた・繋がりがあると確信した41歳の男が、彼を自作の銃で撃ち殺した。
さて、ここで心配?になるのは、世の故・安倍晋三ファンの人たちの心理状況である。
まず、統一教会に限らず新興宗教というのは、普通の日本人のほぼ全員から「ろくでもないもの」「決して付き合ってはならないもの」と見られている。
この新興宗教への嫌悪・反感・忌避感はものすごく強固で――
これが、今の日本人が世界で最も反宗教的な民族である(と思う)ことの大きな要因となっているだろう。
要するに、「宗教」やってる奴なんてロクなもんじゃない、というのが日本人の一般共通認識なのだ。
これに加うるに統一教会というのは、韓国の新興宗教である。
教祖はもちろん、韓国人である。(開祖は文鮮明という人)
さて――
故・安倍晋三ファンの人たちの大部分は、韓国嫌いだと思われる。
世界で一番嫌いな国は韓国か中国、その次あたりが北朝鮮、というのが一般共通認識だろう。
しかし、こともあろうにその故・安倍晋三 氏は……
その「韓国の新興宗教」という、故・安倍晋三ファンが最も嫌ってしかるべき統一教会(の、明らかな友好団体)というものに、ビデオメッセージで祝辞を送っていたのである。
(これは事実で、誰も否定できない。)
いや、私もあなたもわかっているのだ。
故・安倍晋三 氏が心から統一教会を応援し、祝福していたのではない、などということは。
ましてや信者の一人であるわけもなく、そんな祝辞を送るのはただの「付き合い」であり、カネや票のためであるということは。
統一教会にはあのトランプ元大統領もビデオメッセージを送っていたが、彼もまた同じ理由でそんなことをしていたのだということは――
故・安倍晋三 氏の感覚としては、統一教会との仲は「腐れ縁」みたいなものだったのかもしれない。
それは反共産主義という共通点で結びついた、自民党と統一教会(そして昔の韓国軍部)の「付き合い」の名残みたいなイメージだったのかもしれない。
もし彼が自分が暗殺されるかもしれないと思っていたとしても、まさかこんなことが原因であるなんて、思いつきもしなかったろう。
だが、故・安倍晋三 氏の感覚がどうであろうと、彼が統一教会という「韓国」の「新興宗教」――
それもこれ以上ないほど日本で悪評を響かせた宗教団体(の子団体)に、祝辞を寄せていたのは事実であった。
故・安倍晋三ファンの人たちは、これをどう心の整理を付けるのだろうか。
いや、これも、私にもあなたにもわかっている。
故・安倍晋三ファンの人たちが、そんなことで激しく動揺したり精神分裂症みたいになりはしないことは。
しかしこれ、真面目に考えれば、ファン心理としてものすごい矛盾に直面することになると思うのである。
別に私はアベガーと呼ばれたようなアンチ安倍ではないのだが、この点をファンはどう考えているのだろうかとは思うのだ。
それにしても今回の件で、ますます日本人は新興宗教・宗教団体というものが嫌いになった。
これは世界でも珍しいことと思うが、ますます日本では「国民による宗教弾圧・宗教蔑視」が広まっていくことだろう……