7月19日、経済学者で元総務大臣の「あの」竹中平蔵氏が、パソナ会長を退任することが発表された。
正式には8月の株主総会と取締役会で退任するという。
(⇒ 産経WEST 2022年7月19日記事:竹中平蔵氏、パソナ会長退任へ 「10年やり区切り」)
さて、先日の記事でも書いたことだが――
「安倍晋三、撃たる」の報を初めて聞いたとき、
「これは氷河期世代の復讐か」
「次に撃たれるのは竹中平蔵ではないか」
と直感した人は、日本中に何百万人もいたはずだ。
なぜなら安倍晋三氏とそのアベノミクスを推進したとされる竹中平蔵氏は、氷河期世代を絶望の人生に陥れた戦犯コンビ扱いされているからである。
そしてこれに元総理大臣の小泉“小泉改革”純一郎氏を加えたのが、「悪の枢軸三巨頭」のように思われているからである。
現にネットでの世評がそうなっていることを、少しでもネットを見ている人なら誰でも知っているはずだ。
ところでかつて、日本経済と日本企業をたった一つの言葉で要約・表現しようとするならば、それは「カイゼン(改善)」という言葉だったろう。
では21世紀の令和の今はどうかと言えば、それは「ナカヌキ(中抜き)」という言葉に違いない。
今の日本が「中抜き大国」だということは、相当広く日本人に知れ渡っている。
いまや財やサービスが不自然に高い(と感じられる)ことが報じられると、たちまち「ほらみろ中抜き」「どうせ中抜き」とみんなが一斉に反応する。
日本経済がいつまでも低空飛行しているのも、
日本人の賃金が30年も上がっていないのも、
つい先日の尼崎市全市民情報入りUSB紛失事件も、
突き詰めると全て諸悪の根源は「中抜き」の行きつくものとされている。
そしてこのように日本経済をナカヌキ経済化したのが竹中平蔵氏であり、
彼が会長を務めることになったパソナこそ、派遣ナカヌキ企業の総元締めみたいな扱いになっている。
(いったいパソナの社員の人は、自分と自社が世間にどう思われているかと思うと、不安になったりしていないだろうか……)
私には、日本経済が成長しないのと賃金が上がらないのと格差や貧困が拡大しているのが、本当にナカヌキ経済化が原因なのか判断する知識がない。
また、そもそも本当に日本経済がナカヌキ経済化しているのか、
よその国ではそんなことはないのか、
ナカヌキ企業がやっぱりはびこっているのかいないのか、
そんなこともよく知らない。
たぶんあなたも、アメリカの経済と企業で中抜きがどう行われているのかいないのかは知らないし、
ポーランドではどうなっているのかなんて、なおのこと知りはしないだろう。
しかしこれだけ広く言われているのだから、少なくとも日本ではナカヌキ経済・ナカヌキ企業が横行しているのだと感じるのみである。
それにしても2000年前後あたりには、
「インターネットの発達によって仲介者はいらなくなる。
財やサービスの送り手が消費者と直接つながるようになる」
と、誰もが揃って言っていたはずである。
その論には、「確かにそうだ、そうなるだろう」と思わせる説得力もあったと思う。
しかし、あにはからんや……
少なくとも日本は、それとは全く逆方向の中間者ナカヌキ経済を発展させてきたことになる。
日本の経済学者は、どうしてそうなったのかこそ研究する使命があるのではなかろうか(笑)
私は日本経済がこうなったのが、竹中平蔵氏一人(あるいは「悪の枢軸三巨頭」)のせいだとはあまり思わない。
それはさすがに過大評価というものである。
しかしやはり、当時の(今風に言えば)経団連などの上級国民、(昔風に言えば)資本家階級が、このように日本を持って行ったのだとは言えるかもしれない。
そうなるとむろん竹中平蔵氏も、その一端を担っていたことになる。
だからやっぱり、日本中の数十万人・数百万人と同じようなことを思ってしまうのである――
今回の竹中氏の退任は、安倍晋三氏の射殺を受けてビビッて(公職から退いて人前に出なくていいように)身を隠そうとする行為ではないのだろうか、と……