このたび国連の人口予測において、2023年(来年)にはインドが中国を抜いて世界一の人口大国になる見通しが示された。
2019年の人口予測ではそうなるのは2027年ごろとされていたが、アッという間に早まった格好だ。
そしてこれが、中国の経済成長を鈍化させ国力を弱体化させ――
そうなってしまう前に中学は台湾侵攻に踏み切るかもしれない、という観測も出ているという。
(⇒ 読売新聞 2022年7月18日記事:人口世界一から陥落予測の中国、成長鈍化に危機感…米専門家「衰退前に台湾侵攻の危険性」)
しかしまあ、つくづく思うのだが……
「人間は愚かである」というのは使い古された文句だが、この「人口減少で危機感」ということほど、その最新最大の事例はないだろう。
中国と言えば、かの「一人っ子政策」が有名である。
文字どおり「夫婦は一人しか子どもを持たないようにしよう」という、政府推進の半強制運動である。
むろんそんなことをすれば、人口が急減するのは当然だ。
こんなことはよほどのバカでもすぐわかる。
しかしその効果が出てきたら、今度はそれで「危機感を持つ」というのである。
いったい中国政府に限ったことではないが、人間というのはどこまで愚かなのだろう。どこまで果てしないバカなのだろう。
もちろん日本においても事情は似たり寄ったりで、いま人口減少は日本の最大最重要の課題となっている。
これはもう、国民的常識でありコンセンサスと言って間違いない。
ところが、それほど遠くない過去において、日本の課題は逆に「人口増大にどう対処するか」であった。
私はさすがにそんな年代ではないが、1960~70年代には、「どうやれば日本の人口を減らせるか」を小中学校の授業で話し合ったりしていたという。
さらに遡ると、そもそも日本が大陸にしきりに進出しようとしていた最大の理由(口実)の一つは、
「この狭い日本列島だけで8,000万国民を養っていけるはずがない」
というものであった。
今から見れば(後知恵とはいえ)これもまた、噴飯物のバカさ加減であった――と思われても仕方ない。
しかし中国の一人っ子政策も日本の「人口増加への対応」も、そのときはバカとは思われていなかった。
その結果がどうなるか、人口減少という事態が生じることは誰でもわかっていたはずだが、それでも「バカか」と立ち上がる政治家も国民もいなかった。
それを今、その事態が現実になってやっと大騒ぎしている。
やはり人間は、根本的にみんなバカなのであろうか。
もっとも、現在の世界大国(列強)の軒並みの人口減少傾向は、本当に悪いことなのかという疑問もある。
少なくとも世界大国が人口減少により「戦争できない国」「戦争どころじゃない国」になれば、世界戦争が起きる可能性は下がる。
中国が戦争どころじゃない国になれば、それは日本にとって多大なメリットがあるに違いない。
逆に中国にとっても、日本が(平和憲法とか関係なく、人口的に)戦争できない国になるのは、大いに歓迎するところだ。
そう、こんなことを書いている私も、後世からはバカの一員と見なされる可能性は濃厚である……