プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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トヨタ御曹司、元タカラジェンヌと結婚へ-日本人は格差社会を望んでいる?

 トヨタ自動車の社長・豊田章男氏の長男である豊田大輔氏が、元タカラジェンヌの星蘭ひとみ氏(26歳)と結婚することを、週刊文春がスクープした。

bunshun.jp

 


 いくら天下のトヨタの御曹司とはいえ、トヨタの一社員に過ぎないのに結婚することを全国に報じられてはたまらないな――

 などと反射的に思ってしまったが、記事を読めば大輔氏は32歳にして、トヨタ関連会社のウーブン・アルファ株式会社の代表取締役である。

 そして添付画像を見れば、「TRIADシニア・バイス・プレジデント」(上級副社長)ともテロップが出ている。

 こんなニュースを聞いて、


「いいなあ、世襲は。

 いいなあ、御曹司は。

 いいなあ、金持ちは。

 いいなあ、上流階級は」

 
 と本当に全く思わない人というのは、人の心を持たぬ禽獣と言っても差し支えあるまい。

 しかしこのニュースについてのネットのコメント欄には、そんな感想は全く出てこない。

 意外と言うべきかそうでないのか、ほとんど全てが祝福コメントなのである。

 しからばそういうコメントを書き込んでいる人は禽獣なのかと言えば、そうではないだろう。

 みんな絶対、上記のように「いいなあ」と思っているに違いないのである。

 しかしその気持ちを抑えて、祝福めいたコメントを書き込んでいるのである。


 だが一方、そうではないという可能性も確かにある。

 すなわち日本人は、(「上級国民」は指弾するが)上流階級・富裕階級・エリート層の存在を、かつてなく積極的に容認するようになっているのではなかろうか。

 いや、もともと日本人は(アジア人は)世襲というものを愛し続けてきたのだが――

 世襲主義や血統主義というものは、日本社会のあらゆる分野で「正しい」「あるべき」ものとしてリバイバルに成功しているのではなかろうか。

 

tairanaritoshi-2.hatenablog.com



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 トヨタ自動車は言うまでもなく、現代日本企業の頂点である。世界的大企業である。

 その経営ぶり・仕事ぶりは、全ての日本企業のお手本のような扱いをされている。

 しかし、その世界的大企業のトップが世襲だというのは、欧米人からはかなり異様なものに見えているのではないかと思う。

 ひょっとしたら彼らはトヨタの社長と会うとき、幕末にショーグンを訪ねに来た欧米使節の人たちと同じような心持ちになってはいまいか。

 あるいはカール・マルクスがもし現代に生きていたら、「アジア的経営様式」とでも呟いたかもしれない。

 もしビル・ゲイツスティーブ・ジョブズらが自分の子どもに自分の会社の跡を継がせたとすれば、その株価は暴落するのではないかと私は思う。

 しかし日本では、アジアでは、そうではない。

 むしろトップを世襲することは、好ましいどころか「あるべき素晴らしい姿」とさえ受け止められていそうである。

 そういえば北朝鮮も「朝鮮民主主義人民共和国」という国名からして、世襲なんて絶対許されないはずなのに――

 当然のようにと言うべきか、堂々たる世襲王朝となっている。

 やはり日本人をはじめとするアジア人、中東以東のアジア人は、みんなみんな世襲を愛しているようだ。

(たぶん、韓国人も愛している。その点でやはり「アジアは一つ」と言うべきなのかもしれない。)


 日本人は、世襲を愛している。

 そして心の底では、「人間には上下があるべきだ」という信念がある。

 これこそが日本人の「民族の魂」であり「核」と言っても過言ではない。

(もう一つの魂であり核なのは、「ケガレ意識」というものである。)


 第二次世界大戦での敗北と占領で、日本は確かに一発ガツンとやられた。

 しかし、喉元過ぎれば何とやら――

 年月さえ過ぎれば、必ずや民族の魂は再生する。

 「人間には上下がある・あるべき」という道徳さえあれば、世襲血統主義は何度でも美しく再生する。

 端的に言えば、日本人は封建身分制が好きなのである。

 それが魂のふるさとであり、理想の国であり、絶えずそこに戻っていきたがっている――

 と言っては、言い過ぎだろうか。

 だから日本人は、根底的には格差社会に順応性があるはずである。

 いやむしろ、格差社会という身分に上下のある社会こそ、望むところのものであるはずだ。

 もちろんそこでの最高に美しい道徳、最高に理想的な国のかたちというのは、「上下、相和す」というものである。


 しかし、それにしても、これはみなさんも絶対に思ったはずだが――

 今回のようなニュースを、トヨタグループの社員の人たちは「本当は」どういう思いで聞いているのだろう。

 いや、世間の一般人は、「本当は」どんな思いで聞いているのだろう。

 自分の境遇と引き比べてその「格差」に傷ついたり打ちのめされている人は、本当にいないのだろうか……