プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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トヨタ「学歴ロンダリング」パワハラ自殺事件-所詮トヨタも日本企業、国際競争にはいずれ勝てない?

 なかなか印象に残る記事タイトルであり、内容である。
 2017年、トヨタ自動車の男性社員(当時27歳)が適応障害を起こして自殺したが――
 その原因は上司からのパワハラであるとして、労働基準監督署が労災認定していたことがわかったという。
 なんでもその上司、この男性が地方大学を卒業してから東京大学大学院に進んだことを「学歴ロンダリング」だと侮辱したらしい。
 
 人がある大学を卒業してから東大大学院に進むことを、「学歴ロンダリング」と侮蔑する……
 いやあ、新鮮というか何というか、よく考えつく発想である。
 この上司に「高学歴エリートに対する嫉妬」があった、と思わない人は、よもやこの世にいないだろう。
 言ってみればこれ、トヨタでなくても、どこの会社にも世界にでもありそうな話である。
 もっとも、その会社なり世界なりというのは、日本の中に限った話なのかもしれない。
 はたして外国では、ハーバード大学卒の人がそうでない上司から、このような言い方で罵倒されるものだろうか……?

 しかし問題は、この(いわば日本では)ありふれた面にあるのではない。
 男性は3ヶ月休職した後に復帰したが、何とその席は当の上司のすぐ近くで、(確かにあり得る話だが)仕事でプレッシャーがかかった時などに手足が震えたりミスが増えたりすることが続いたらしい。
 そのあげくに、自殺である。
 いったいなんでまた、よりにもよってそんな配席にするのか、理解に苦しむ人は相当多数に上るだろう。
 
 トヨタ自動車と言えば、「天下のトヨタ」である。
 日本最強の企業であり、その経営はたいていベタ褒めされ、「トヨタ式」と言えば「東大式」と同じくらい人に「おお」と思わせる効果がある。
 この景気の悪い話しかない現代日本企業の中で、ほぼ唯一「世界と戦える」企業だとさえ思われているのではなかろうか。  

 しかしその天下のトヨタでさえ、実情と言えばこうなのだ。
 おそらくこの男性が配属されたトヨタの車両設計部門では、彼に対する上司のパワハラを止める人がいなかったのである。
 そして彼が休職しても、ロクに実情調査はなされることはなかったのである。
 もっともこの上司、たぶんこの世の至る所にいる「モンスター系封建土人国のボス」みたいなタイプだったのだろう。
 そういう人にどんな形でも抵抗するのは、確かに難しく気後れするものである。
 だが、もしそうだったとすれば――
 要するに天下のトヨタでさえもそういう人物を内部に抱えてしまい、排除も制御もできていないのだという証明になる。
 つまるところトヨタもまた、いくら今は褒め称えられていようとも、しょせんは「日本企業」なのだ。

 そういえばトヨタの現社長の豊田章男氏もまた、とても褒め称えられている日本の経営者の筆頭格である。
 「トヨタイムズ」などで自身も積極的に露出し、その経営手腕に疑問を投げかける本もネット記事もほとんど見かけない。
 しかしどうしても気になるのは、彼もまた「世襲経営者」の一人に他ならない、という事実である。
 創業家である豊田家の血統であるからこそ、トップの座に就けたという「事実」である。
 
 いや、もしかしたら彼は、たとえ豊田家の人間でないただの一般人出身であっても、トップに上り詰めたのかもしれない。
 しかしもしそういう賭けができたとしたら、あなたはそっちに賭けるだろうか。
 トヨタはむろん、地方都市の自動車整備工場の中小企業ではない。
 世界の自動車市場の覇権を争おうかというような、世界有数の大企業である。
 その経営トップが世襲だというのは、しかもそれが少なくとも国内では誰にも悪く言われないというのは、はたして大丈夫なのだろうか。
 あなたは、もしアップルが故スティーブ・ジョブズの血縁者の世襲企業になっていたとしたら、それでいいのだと思うだろうか。
 そんなことがあったら、アップルの株価は急落したと思わないか。
 
 予言と言うほどのことではないが、私はトヨタの将来がそんなに明るいものだとは思わない。
 明るくなるとすれば、それは日本企業でなくなったとき――
 すなわち、今回の事件のような封建土人性を、社内から除去できた時だと思う。
 しかしそれには、本社を日本から外国に移し、本当に日本の会社でなくなってしまうという超変革が必要なのかもしれない……