プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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元首相・中曽根康弘の孫、中曽根康隆氏が衆院選出馬表明-日本人らアジア人は世襲を愛している/「土人指数」という尺度

 今もなお99歳で生きている元首相・中曽根康弘の孫、そして元外相・中曽根弘文氏の子であり秘書を務める中曽根康隆氏(35歳)が、来たる衆院選で群馬一区から立候補することを表明した。

 自民党の公認を目指して活動するつもりらしいが、すでに自民党は別の候補の擁立を決め、女性問題で捨てられた形の現任議員もまだ再選を諦めていないとされる。群馬一区は、保守国政政党系が三派に分かれて争うことになるかもしれない。

www.sankei.com

 

 しかしまあ、日本は相変わらず世襲国会議員というのが多い。

 現首相の安倍晋三は、言うまでもなく元首相・岸信介の孫であり、元外相・自民党幹事長の安倍晋太郎の子である。

 その他にも、日本の現任国会議員や立候補者と言えば――

 国会議員の息子か娘、そうでなければ配偶者とか娘婿とかであることがありふれた定番だ。

 あなたの住んでいる選挙区でも、そういう人が選出されている確率は非常に大きい。


 今年フランスでは、39歳のエマニュエル・マクロン大統領が誕生した。

 高齢者が幅をきかせる(と非高齢者は感じている)日本では、こんな清新な出来事はあり得ない――と嘆くのは早く、もちろん日本でも三十代や四十代の青年が首相になる可能性はある。

 しかしもちろんその人は、世襲であるに違いない。

 将来の青年首相候補として最も有力なのは、現在の自民党筆頭副幹事長である小泉進次郎であることは言うまでもない。

 当然のこと彼は元首相・小泉純一郎の子であり、純一郎は祖父の代からの政治家一家である。

 日本の有力政治家というのがこのパターンばかりのように見えるのは、民主制の近代国家として極めて異常なことだと言わねばなるまい。

 もしあなたが、次のような文章を目にしたらどう思うだろう。


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 極東のベリジア共和国は、議会制民主主義をとっている。

 その大統領や大臣、国会議員は、かなりの割合が世襲で選出されている。

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 もちろんあなたは、このベリジア共和国というのが“遅れた国”だと思うだろう。

 それこそつい先日トランプ大統領がイランを指して言ったように、「民主主義の皮をかぶった」土人後進国だと感じるだろう。

 しかしこれは、まさにこの日本にこそピッタリ当てはまっているのである。


 私は国家や民族の開明度を測るのに、「土人指数」という物差しがあるのではないかと思う。

 その国や民族が、どれだけ進んでいるか/遅れているかを表す尺度である。

 この場合、むろん世襲の何が悪いんだ、いいじゃないか」と感じる人民の割合が多ければ多いほど、その集団の土人指数は高くなる。

 この尺度を用いた場合、日本国と日本人の土人指数は、世界の中でも相当高い方ではないかと思われる。

 
 どうも日本人は、基本的な一般論としては「世襲はよくない」と思いながら(かつ言いながら)、政治家の選挙の時にはなぜか全然話が違うようである。

 どうも日本人は、政治家という“職業”は、「家業」だと思っているようである。いやそれどころか、「家業であるべきだ」とさえ思っていそうである。

 なるほど「自分の地位や地盤を自分の子に継がせたい」というのは、人類共通の願いではあるかもしれない。

 ただしそれに赤の他人が同意したり共鳴したり賛成したりする理由はないはずなのだが、なぜかこの日本ではそういうことが起きているのだ。


 確かに私も、そこらの中小企業や個人商店が世襲であることまで否定的には思わない。

 それはそれでよいだろうし、他人にはほとんど関係ないことである。

 しかし国政や地方自治の議員職・官職が世襲で受け継がれる――しかも選挙で選ばれるというのには、ハッキリ否定するものである。

 そしてそれは、あなただって同じはずなのだ。

 なぜならあなたは、ベリジア共和国がそんな国だと聞けば「へえ、遅れた国だなあ」と思うに違いないからである。

 
 土人だなとまでは思わなくても、意識の遅れた封建的な風土なのだと思うに決まっているからである。

 それが「ベリジア」を「日本」に変えただけで途端に思わなくなるというのは、実におかしな話ではないか。


 私は何もことさらに日本を貶めるつもりはなく、似たような国は他にもある。

 シンガポールの現首相リー・シェンロン氏は、“開発独裁”でシンガポールを発展させたとされる元首相リー・クアンユーの子である。

 インドは女性の地位が高いことで有名な国では決してないが、それでもインディラ・ガンディーという女性が首相になったことがある。(1980~1984年)

 しかしむろん彼女は、“インド建国の父”で元首相のネルーの娘である。(あの非暴力主義のガンディーとはたまたま名字が一緒なだけで、血縁関係はない。)

 またガチガチのイスラム教国であり「レイプされた女性を逆に処刑する/レイプした男と結婚させる」なんて話が今でも時々ニュースになるパキスタンでさえ、ベナジル・ブットという女性首相が誕生している。(1988~1990年)

 これは奇跡のような出来事だが、もちろん彼女の父は元首相であった。

 そして言うまでもなく現在の北朝鮮は、世襲で受け継がれる金王朝支配下にある。

 特に「イスラム教国で女性が国のトップになる」なんてことは、ブットのただ一例のみであり空前絶後と言えるのだが――

 なんとイスラム教国でさえも世襲は、女性蔑視や偏見など全ての障害を超え得るのである。

 これはもう、日本を含むアジア人というのは、「世襲を愛している」と言ってよいのではなかろうか。
 

 だがこれは、欧米諸国から見た日本が、シンガポールやインドやパキスタン北朝鮮とよく似ているように映るだろうことを意味している。

 国会議員や閣僚の中で世襲者の割合が高いことを知れば、そう思うのはごく自然なことである。

 それこそ欧米から見れば、日本もやっぱり縁故主義で封建的で土人的な「オリエンタリズム」の中にある――それでもなぜかいまだ経済大国である不思議な国、と思われていても仕方ない。

 もしタイムスリップして22世紀の日本に行けば、そこではまだ「中曽根」「小泉」「安倍」などといった名字の人物が議員や首相をやっているのではあるまいか。

 政治を家業と見、その跡取りに票を入れるのが「好ましいor普通・当然の選択」という日本人の土人指数とオリエンタリズムは、21世紀中に消滅するのか怪しいものだからである……

(ちなみにこの記事は、中曽根康隆氏らへのヘイトスピーチではありません。)