プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ウクライナ危機:ロシア軍の兵力が意外と「少ない」件

 2月23日、ウクライナ政府はロシアの侵攻の脅威に対し、非常事態宣言を発令する方針を固めたという。

 ロシアは2月21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認している。

 そして2月20日の段階で、ウクライナ国境にはロシア通常兵力の75%、最大19万人が集結している――

 と、欧米の報道機関は報じている。


 皆さんはこれを聞いて、直感的にどう思われるだろうか。

 通常兵力の75%が19万人だということは、全通常兵力は約25万人である。
 
 えー、これがロシアの全兵力なんですか? 少なすぎませんか? こんなもんなんすか?

 と、何かの間違いじゃないかとすら思わなかったろうか。


 ロシアと言えば、旧ソ連である。

 旧ソ連第二次世界大戦で、ナチスドイツと史上最大最悪の陸上戦である独ソ戦を行った。

 その印象はあまりにも強く――

 特に、ソ連が(信じられないほどの)大損害を受けても次から次へと部隊・兵員を繰り出してくる、いわゆる人海戦術・物量戦術でドイツを粉砕したというのは、ちょっとでも独ソ戦を知っている人なら常識だろう。

 そしてちょっとでも独ソ戦史を読んだことがある人なら、

 ソ連軍が包囲されて何十万人もの捕虜や損害を出したというのが、一度や二度でなく何回もあったことについても、「すげぇもんだ」「よくこれで戦争に負けないもんだ」と絶対に思うはずである。

 しかし2022年の今、報道を信じる限りでは、ロシア軍の総兵力は「たった25万人」でしかない。

 旧ソ連軍がたった一度の戦いでドイツに捕虜に取られた人数より、まだ少ない人数でしかない。

 もうロシア軍は――現代軍隊は、と言うべきかもしれないが――、かつてのソ連軍とは全然違う軍隊になったのだということを、これほど印象づける数字はないだろう。

 そして私は逆に、「こんなことでロシアは大丈夫なのか」と思ってしまうのだ。

 たった25万人であんな広大な領土を守れるのか、守れると思っているのか、とても不思議に感じるのである。

 あるいはプーチン大統領もそう懸念しているからこそ、ウクライナみたいな広大な(そして独ソ戦の最激戦地である)隣国がNATOに加盟するなんてことは、絶対に許せないと強く感じているのかもしれない。

 ウクライナはちょうど、ロシアにとっての「絶対国防圏」なのかもしれない。

(明治の日本も、朝鮮半島を自らの「絶対国防圏」だと思っていた。)


 現代戦は兵力ではない(頭数ではない)、それはそうなのだろうとわかってはいるが――

 そしてロシアは意外にも人口が多くなく、お定まりの少子高齢化がも進んでいるとは言っても――

 第二次大戦時、いやアフガニスタン撤退時に比べてもなお際立つこの全兵力の少なさは、やはりロシアの根本的な「弱さ」なのではなかろうか。

 もしロシアがウクライナに侵攻すれば、それはたぶん簡単に勝利するのだろう。

 しかし完全に平定してしまえるかどうか、あるいは他国から守り切れるかどうかには、かなり疑問符が付く気がする。

 ロシアがヨーロッパへ供給されるエネルギー資源を握っている、という点を別にすれば、必ずしもロシアは強い立場にあるわけではない……

 それどころか1910年代のシベリア出兵時代以来の脆弱な状態にあるとさえ言える、と言っては言い過ぎだろうか。