10月16日、ペルーの文化省は、幅37メートルに及ぶ新たな「ナスカの地上絵」を発見した、と発表した。
それは丘の急斜面に描かれた、ネコ科の動物(ピューマ?)だという。
このニュースをネットで文字タイトルで見たとき、ワクワクしてクリックした人がどれほど多くいただろう。
そして、いざクリックして画像を見たとき、「何じゃこりゃあ」と思わなかった人がどれだけいただろう。
(⇒ テレ朝News 2020年10月17日記事:ナスカの地上絵に新たなものを発見 丘の斜面にネコ科の動物か)
そう、これはネット上で話題になるのも当然である。
思わずズッコケというかドッチラケというか、目を疑うというか……
この「ネコ科動物」の絵なるもの、とにかくものすごくヘタクソなのである。
それはまるで、古代人というより現代の幼児が描いたネコの絵のようだ。
私も絵がヘタなことでは人後に落ちないので、あまり罵るのも気が進まないが――
古代遺跡にロマンをはせるタイプの人なら、「こんなのナスカの地上絵じゃないやい」と憤激してもおかしくないレベルとは言っていいだろう。
なるほど報道によると今回見つかった絵は、我々がイメージとして知っている「すごく幾何学的・直線的なハチドリの絵」や「尻尾が多重円にグルグル巻きになったサルの絵」より、時代が古いものらしい。
つまり、ナスカの地上絵の歴史の中でも初期に属するもののようだが……
しかし、それを考慮しても、このヘタ過ぎさは言語に絶する。
別に古代人がチョチョッとラクガキした絵が見つかったのではなく、全長37メートルなのである。
こんなヘタな絵を、古代人たちが労力を込めて丘の斜面に描いていたというのは――
これはもう、ロマンではなくジョークかギャグの世界のように感じる。
そして、もしこれが悪質なイタズラではなく、本当に「初期型ナスカの地上絵」だとしたら――
我々がナスカの地上絵の描き方として「知っている」、
「まず普通サイズの絵を描いておき、
それをロープと杭を使って同じ比率で地面に拡大描写する。
(そうすれば、宇宙人ならぬ古代人でも比較的簡単に地上絵は描ける)」
というあの理屈は、これに適用できるのだろうか。
私にはこのヘタクソな絵、
丘の麓で監督が口で指図しながら、
斜面にうろつく作業員たちが(あるいは作業員一人が)言われるままに線を描いていった、
後からそれを「清書」した、
という方がよほど現実的だと感じられる。
こんなのだったら、ロープや杭もいらないと思う。
今回のネコ科動物の絵は、ナスカの地上絵に対する神秘性・ロマン性をぶち壊すほどの破壊的威力がある。
もしかして、ナスカの地上絵というのは本当にナスカ人にとって、そんなに神聖な意味はなかったのではないかとすら思わせる。
(現代で言う、「おらが村の自慢の看板」みたいなもの?)
tairanaritoshi-2.hatenablog.com
ところで絵のヘタさに並んで今回の発見が衝撃的なのは、
それが既存の道路の本当にすぐそば、手を伸ばせば届くような所にある、ということだろう。
砂漠みたいな平地をまっすぐ延びる道路、
それがくだんの丘で(急斜面を避けて)カクッと右に折れ、
丘の側面のなだらかな斜面を横切るようにまっすぐ伸び、
丘を越えてまた平地に伸びる。
「急な斜面に描かれていたため、自然の浸食でほぼ見えない状態だった」
とは報じられているが……
もしこれが本当なら(つまり、イタズラでないのなら)、
ナスカ地方の丘という丘の斜面を調べ尽くした方が良さそうである。
そうすればたぶん、ナスカの地上絵というのは日本のお地蔵さんのように――
まさにどこにでもある、ということがわかるのではなかろうか。