米カリフォルニア大学サンタバーバラ校などの、米英連合研究チームの発表によると――
中東はシリア北部の古代遺跡「アブ・フレイラ」(現在はダム湖の底に水没)の水没前に掘り出された地層や遺物の分析から、
約1万2800年前のこの地域で彗星の空中爆発があり、それにより住民たちは狩猟採集生活から農耕牧畜生活へ移行したのではないか、という。
この1万2800年前というのは、とても覚えやすい名前で有名な(?)「ヤンガードリアス期」という1000年くらい続いた地球寒冷期時代の始まり頃に当たる。
研究チームは、その寒冷期の始まりの原因自体をも、この彗星爆発(他の地域でも、この同じ彗星の破片が連続爆発した)に求めているうようだ。
(⇒ 朝日新聞 2023年10月27日記事:彗星の空中爆発で農耕時代が始まった? 中東の遺跡に「激変」の痕跡)
これはまさに、歴史ロマンである。
この彗星爆発に直面した人・死んだ人にとってはロマンも糞もないのだが、それでも無責任・無関係な後世の人間にとっては大ロマンとして感じられる。
いや、もちろん、これはロマンどころではない。
なにせ「農耕の開始」というのは、人類史上最大の超大事件であり超大変革とされている。
これに比べれば、核兵器の登場さえも影が薄い。
それが気候変動のせいではないかというのは、以前から言われてはいた。
なにせ大方のイメージとは違い、実は狩猟採集生活の方が農耕生活よりずっと楽で栄養も良かった――今風に言えば幸福度が高かった――だろう、というのが最近の定説(または流行説)であるからだ。
そんな幸福な狩猟採集生活をやめて「辛い」「貧富の差が生じる」には、何か相当に差し迫った事情があったに違いない。
そんな差し迫った事情とは、まぁ気候変動以外には考えつかない、とは言われていたのだ。
しかしその原因「までも」、またしても隕石衝突ならぬ彗星爆発だった(らしい)とは……
というのも今から2年前、あの聖書に記された「悪徳の街ソドム」の炎に包まれた滅亡は、実は隕石爆発による事実だったのではないかという研究が発表されているからである。
(⇒ 2021年9月22日記事:ソドムは隕石爆発で滅亡した?-聖書と神話は事実を物語るか)
そして今度は、ソドム滅亡どころか農耕開始という、これ以上ない大事件の原因がまたも天体落下の大爆発によるものという研究結果――
これはもう「天変地異歴史学」というか、人類の歴史は天変地異で作られたとする「激変説」が、少なくとも古代史においては正当な歴史学になってもおかしくない勢いではないか。
周知のとおり古生物学・進化学の世界には、生物進化は緩やかにしか進まないとする「漸進説」と、そうではなく突然に生じるのだとする「激変説・断続平衡説」の2つの考え方がある。
大昔は前者が優勢だったが、どうも今は後者の方が優勢である。(素人目で見ると)
そして人間の歴史の世界でも、どうも激変説の方が優勢になる番ではなかろうか。
それは、言うまでもないが――
数百万年にわたる人類の歴史の中では、そうした天変地異は何度も起こってきたはずであり、そのたびに人類の歴史は確かに何度も変わってきたに違いないからだ。
つい最近には、実は93万年前の人類は、全地球で2000人もいない絶滅寸前状態だったという説が発表されたばかりでもある。
またこれとは別に、7万年前にも似たような極度の人口減少に見舞われたとの説もある。
そう、歴史を遡れば遡るほど、人類の歴史が天変地異で変わったことを示す事例は次々発見されるだろう。
そして次のその事例が起きるのは、隕石・彗星の爆発ではなく――幸いそれは事前に探知・対応できそう――、火山の爆発ということになるのだろう。