地球温暖化による海面上昇で、国土存亡の危機に直面しているのが南太平洋の群小諸国……
そしてまたインド洋の島嶼諸国である。
そのインド洋の群島国家モルディブで、「世界初の水上都市」構想がこの11月から着工するという。
これはオランダ企業との共同プロジェクトで、早ければ2027年の完成を見込んでいるとのこと。
(⇒ TBS NEWS DIG 2023年10月29日記事:壮大!“国土水没の危機”の島国で世界初「水上都市」プロジェクト 海底に伸縮可能な支柱を設置「私たちはイノベーションで生き残る」)
もちろんこれは、「いいこと」「素晴らしいこと」とは言えないのだろう。
それは国土水没の危機に直面した国の窮余の策であり、むしろ悲壮なプロジェクトとも言えるかもしれない。
が、皆さんはこのニュースを聞いて、目を疑わなかっただろうか。
水上住宅の下には(サンゴ礁に)3メートル上下に伸縮する柱を建て、海面上昇に対応する。
環礁に防護工事を施して防波堤とする。
そんな大規模な、まさにかつての日本で空想された「未来都市」のプロジェクトが、こう言っては何だが日本に比べればまだまだ吹けば飛ぶような小国のモルディブで、世界に先駆けて実現されようとしているのだ。
しかもその完成は、2027年を目途としているというのだ。
2027年って、もうすぐそこ――あとたった4年後なのだ。
ここでは、サンゴ礁の保護という(世界の環境問題では必ず出てくるはずの)話はどうなってるのかという話はするまい(笑)
そういうのは措いといて、こんなプロジェクトが着工から4年で完成予定だというのは、日本人にとって瞠目すべきことではあるまいか。
あなたもきっと思っただろうが、こんなスピード感は今の日本には全くない。
いや、もっとハッキリ言えば、構想をまとめ上げて着工に至らせる力量さえ全くない――
と、思わない日本人っているのだろうか。
そしてまた、かつてならこういうプロジェクトには、必ずや日本企業が噛んでいたところではあるまいか。
大林組とか竹中工務店とか、いかにもこういう外国でのビッグプロジェクトに絡んでいて然るべきというイメージがないだろうか。
だがそれは、もはや過去の――遠きバブル時代の――イメージなのだろう。
たぶん今の日本企業には、国内でさえ――いや、国内においてこそ――こんなプロジェクトをやったり提言したりする力はない。
というより、日本国民自体がそんなプロジェクトを受け入れる心理状態ではない。
こんなのを提案しようものなら、むしろバカ扱いされてボロクソに叩かれるだろうことは、日本人なら千里眼でなくとも見えるはずである。
ましてやこんなのが着工から4年で完成する(予定にする)なんて、誰もあえて想像だにしないのではなかろうか。
おりしも日本は今年、GDPでドイツに抜かれ世界第3位の経済大国の座から陥落することが確実となった。
私は別に、嬉し気に言おうとは思わないが――
ハッキリ言って日本は、「モルディブにも負けている」のではないかと思わざるを得ない。
こんなことを実行に至らせる力も4年で完成させる力も、日本にはないと認めざるを得ない。
このぶんでは世界第4位から10位圏外への転落も、そう遠いことではないのだろう――