タバコを吸うことが、コロナウイルスの予防になる――
そんな説が出ていたことについて、以前にも記事を書いた。
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それがどうやら本当だと確証されたらしいと、内閣参与の飯島勲 氏が記事を書いている。
フランスはパリのピティエ・サルペトリエール病院という病院の調査で――
入院患者343人のうち喫煙者は15人(4.4%)であり、
これはフランス全体の喫煙者率が32.9%であるのに対して圧倒的に少なく、
この結果は統計的に有意として「喫煙者は感染から守られる」、と医学論文で結論づけたという。
私には、この結論が科学的に正しいのかどうか、自分で判断する素養はない。
しかし「うがい薬のイソジンがコロナ予防に効くかもしれない」と大阪府の吉村知事が言ったことよりは、信頼できそうには思う。
そして吉村知事がそう言っただけでイソジンが店頭から姿を消すのなら――今も消えているらしい。私は買ったことないのでわからないが――、高齢者らがニワカ喫煙者になってタバコの売り上げが激増したとしても、別におかしくないのではないか。
だが、ことタバコに関しては、そうはならないだろう。
誰でも予想するのは、飯島氏の書いたような記事が『プレジデント』のようなまずまず権威のあるビジネス誌に載ったことに対し――
これから日本医師会などをはじめとする嫌煙派から、激烈な反論があるだろう、ということである。
嫌煙派は、いまや日本人の主流である。
タバコが百害あって一利なしというのは、国民的コンセンサスである。
いや、これこそポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)だと言っていいだろう。
いまや、「タバコの利」を説くのは、小規模なレジスタンスみたいな場だけで許されている。
公的機関がそのようなことを後援するとかいうのは、考えられもしない。
しかしもし、本当にタバコがコロナを防ぐのが、科学的に正しいと完全に証明されたら。
このコロナ時代において、喫煙者が勝ち組だということになってしまえば――
おそらく嫌煙派は、
「コロナはただの風邪。実はタバコで死ぬ危険性の方がずっと高い」
みたいな戦術に切り替えるしかなくなるだろう。
さて、「タバコが人類を救う」――
このフレーズでたちどころに連想するのが、小松左京のSF小説『復活の日』(1964年!)である。
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『復活の日』は、致死性ウイルスで人類のほぼ全てが死滅し、
南極だけに生き残ったわずかな人類が(このウイルスは極寒に弱い)、
南極から死滅した世界に帰還し、人類復活の兆しを見せるという物語である。
そして、(ネタバレになってしまうが)なぜ死滅した世界への帰還が可能になったかというと、
それは「核ミサイルの発射と爆発が、地球に蔓延したウイルスを死滅させたため」だったのだ。
「核兵器が人類を救う」
「核爆発が致死性ウイルスを殺す」……
これは全く逆説的かつ意外な発想で、さすがSFの巨匠・小松左京だと思わずにいられない。
「タバコが人類を救う」というのは、まるでこれソックリだと、皆さんは思われないだろうか。
しかし、私は当時のことは全然知らないが――
『復活の日』が発刊された頃は、なんだか被爆者から抗議や怒りの声が上がった気がする。
核兵器は絶対悪であるべきで、それが人類を救い・復活させる話など、とんでもない……
少なくとも21世紀の日本人の感覚では、そういうことをすぐ発想してしまいそうだ。
それと同じく、現代日本人の大きな部分が、タバコを絶対悪と感じている。
タバコが人類に恩恵をもたらすなど、たとえ一利でもあることなど、もちろん絶対に認められない。
それはまるで彼らにとって、ナチスにも一利があった、と言い出す奴が現れるのと同じようなものである。
もし、タバコが本当にコロナを防ぐなら。
従来からの喫煙者は、実は勝ち組だったとしたら。
世界規模のタバコ・ウォーズがどのような展開を見せるか、これは非喫煙者にとっても興味津々の問題である。