プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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コロナ猛威と「国民に拒絶されるオリンピック」

 年の瀬も迫った12月26日、東京都では新型コロナウイルスへの新規感染者が949人と過去最多に上った。

 また同日には、主にイギリスで出現した「さらに感染力の強い」変異種への感染者が、初めて日本国内でも確認された。

 冬になって空気が乾燥してくると、コロナの勢いがさらに増すのではないかと前々から言われてはいたが……

 まさにそれを地で行く、いやさらに上を行く事態である。

 こうなってくると、東京在住の地方出身者が帰省するどころの話ではない。

 きっと今年、東京から帰省する人たちとその家族は、ずいぶん周囲から白い目で見られるだろう。

 国内を移動することさえこの有様だから――

 宿泊・旅行業界にとっては、2020年こそが「恐怖の大王が降ってくる」ノストラダムスの1999年だったのだ。
 

 さてしかし、この期に及んでもなお、来年に延期された「東京オリンピック2020」は、開催を模索しているという。

 おそらく国民の90%以上は、これを応援したり願望するどころか、「バカなこと言ってんなよ」と思っているに違いない。

 もちろん大手マスコミは東京オリンピック開催が「国民の待ち望む」ことだと報道するにしても……

 そういう報道がされるのはスポンサーたる商業資本の意向を忖度しているからだと、

 これはもう一般常識になっていると言っても過言ではないだろう。

 帰省もロクにできないのに何がオリンピックか、何が世界中から客を呼ぶだ――

 と思うのが、確かに今は一般常識というものである。

 このコロナショックにより日本では、

 史上初めて国民が「公然と」オリンピックを害悪視し、「そんなもんいらん」というコンセンサスができる事態となった。

 しかし、これは必然とも遅すぎたとも言える話かもしれない。


 だいたい、初めからおかしかったのである――

 コロナ前、あらゆる経済メディアで媒体で、

東京オリンピックを見込み、建設工事が盛んになっている」

「オリンピックを当て込んでマンションが建設されている」

「経済効果は●●千億円と試算されている」

 なんて記事を、あなたはこれでもかと見せられていたはずだ。

 それが全く普通のこととして語られていたはずだ。

 だが、「たかが2週間程度のイベント」のためにマンションはじめ建設工事が盛んになるなど、誰がどう考えたっておかしくないか。

 その2週間の宴が終わった後は、どうするのか。

 これはあまりにも素朴な疑問であって、小学生さえ頭に浮かぶ。

 そして実際、「オリンピックや冬季オリンピックのために建設した施設」が廃墟化しているとか維持費が重荷になっているとか、そういう記事は決して見つけられないわけではない。

 だが、そういうことは言われない。

 あれほど政府・行政のカネのムダ遣いやハコモノ建設を決まって厳しく批判するマスコミでさえ――

 オリンピックのため何百億円かけて新競技場を建設するという話には、まずもって「そんなもの建てるな」とは言わない。

 
 もう何度かこのブログでも書いてきたが、「オリンピックが経済発展・経済回復の起爆剤」になるというのは迷信である。

 日本が経済復興したのは前回の東京オリンピック起爆剤なのではなく、

 日本が経済復興したからオリンピックを開く話になったのである。

 オリンピックを開けば経済発展のきっかけになると言うなら、IOC発展途上国でこそそれを開くべきではないか。
 
 ボツワナとは言わないが、インドネシアやアルゼンチンではどうなのか。

tairanaritoshi-2.hatenablog.com

 


 「オリンピックのため、何百億円かけて施設を整備する」というのは、指弾されて然るべき思考であった。

 しかし今までは公然と指弾されることはなかった。

 ところがコロナ禍の「おかげ」で、そんなことどころかオリンピックの自国開催自体が国民から拒絶・害悪視される超展開となった。

 たぶん、いま忖度なしの街頭インタビューをテレビで放映すれば、

「オリンピックどころかよ」

「オリンピックなんていらない」

 という、庶民の生の声がたくさん聞けることだろう。

  
 しかしそれでも、オリンピックを開く可能性はある。

 選手だけ厳重な検疫をして日本に入国させ、無観客で競技してもらう。

 その会場には、かの世界最大のプロレス団体WWE「サンダードーム」のように液晶パネルを夥しく設置し――

 世界中のオリンピックファンが(有料で)自宅観戦する姿をそのパネルに映すのである。

tairanaritoshi.blog.fc2.com

 


 だが誰でも思うことだが、IOCはそんな開催はしないだろう。

 日本で開催に尽力している関係者も、あくまで有観客にこだわるだろう。

 オリンピックはビッグビジネスであり、有観客でなければカネが動かないからである。

 
 さて、日本のプロレス界はこのコロナ禍の最中でも、(入場者数制限はあれど)有観客興行をほとんど平常と変わらないくらいのペースで開催できている。

 それはサムライTVを見ていればわかることだが、やはり驚くべきことである。

 外国ではそれも厳しいようだが、それでもWWEはサンダードームによって何とかこの新時代に適応しようとしている。 

 翻ってオリンピックは、この新時代にどう適応するのだろうか。

 あくまで有観客で世界中から客を呼ぼうとするならば、その開催は来年どころか再来年も厳しいと思うが……

 オリンピックという世界最大の「イベント」が、もしかしたら過去の遺物として、それどころか時代錯誤の害悪として、世界中の市民からソッポを向かれる日が来るかもしれない……

 まさかこんなことになろうとは、世の変転はやはり人間の予測し得るものではない、ということだろう。