殺人鬼界そして未解決事件界でも、最も有名なもののひとつ――
あの「ゾディアック」事件の犯人が送ってきた51年前の暗号文の解読に、ついに民間人が成功したという。
(⇒ 共同通信 2020年12月14日記事:米連続殺人犯の暗号文解読 未解決事件、送付から51年)
では、その内容はというと……
「私を捕まえようとしている諸君が大いに楽しんでくれることを願っている。
しかしテレビに出たのは私ではない。
私との違いは、私がガス室を恐れていないという点だ。
なぜなら、それは私をすみやかにパラダイスに送ってくれるからだ。
私はすでに、私のために働くには十分な奴隷を所有している。
他の者たちはパラダイスに到達しても何も持っていない。
だから死を恐れる。だが私は恐れない。
なぜなら、私は私の新しい人生を知っているから。
私の人生は楽園での死により、裕福なものになるだろう」
当たり前と言えば当たり前だが、犯人の名前も住所も電話番号も隠されてはいなかった。
あるのはただ、ゾディアックが他でも言っているのと全く同じ内容である。
ゾディアックはこういう妄想というか与太話、一言で言えばタワゴトばかり言っている。
この人はこんなことしか言うことがない、という印象を、多少なりともゾディアック事件について知った人なら抱かないではいられない。
自分が殺した人間は、死後の世界では自分の奴隷になる。だから自分は来世のために人を殺す。
これは言うまでもなく、(しょうもない)狂信であり妄想である。
ゾディアックはたぶん、四六時中こんなことしか考えられない邪教の信者だったのだろう。
そしてまた、結局は「たいしたことない人間」だということがよくわかる。
きっと、あの「切り裂きジャック」がどんな人間だったかと言えば、やっぱりしょうもない人間だったに違いない。
周知のとおり、殺人鬼・連続殺人鬼というのは、現代ではサブカル界のヒーローの一形態である。
善人たちがトレーディングカードになることはないが、彼らはなる。
善人たちを集めた・扱った本はほとんど売られていないが、彼らについての本は非常に多い。
それは即ち、彼らの「ファン」が多いということである。
しかしながら彼らの中身は、決まってショボい。
やったことの凄まじさと中身のみすぼらしさが、まるで反比例関係にあるかのようだ。
彼らについての話を聞いて、決まって連想するのは「昔の宇宙人」である。
そう、1960年代から70年代にかけて「地球に来た」宇宙人の中には――
地球人の核兵器がどうたら環境破壊がどうたら、役にも立たないカラッポな説教をする宇宙人が実にたくさんいたものである。
そんなことそのアンチャンに言ってどうするの、
わざわざ遠くの宇宙から来てそんなことしか言えないの、
と誰もが思わずにいられない、あの宇宙人たち。
彼らについて思うのは、「宇宙から来た、ボケかけた説教爺ちゃん」というイメージである。
そしてまたチャネリングでコンタクティにメッセージを送ってくる「宇宙存在」たちも、愛や平和や調和だとかいう中学生でも口にしないようなことしか言わない(言えない)し、有益な未知の数式なんかを伝える者は一人もいない。
遙かなる宇宙の果てから地球に来れる。思念でメッセージを送ってこれる。
仮に本当にそういう超高度な技術や能力を持っているにしても、その者のしょうもなさ・中身のなさは隠しようがない、というのは決して言い過ぎではないだろう。
いくら高度な暗号文を作れようと、その文の中身のなさはどうやっても埋められない。
ゾディアックも切り裂きジャックも、その他のレジェンド級殺人者たちも――
十中八九つまらない人間、あまり興味をそそらない人間だったと言って間違いはあるまい。
「ヒーローには会うな、失望するから」と西欧では言われるという。
宇宙人も殺人鬼たちも神秘的に見えるかもしれないが、それ以上にそう「思いたい」かもしれないが……
実際のところ、もし知り合いになってみればウンザリ・ガッカリするような連中だというのが、この世の真実ではあるまいか。