人気ユーチューバーの青木歌音(現在31歳)という人が、年金保険料未納で銀行口座の差押を受けるまで国民年金の存在を知らず、もちろん今まで年金保険料を払ったことはなかったことを自らのユーチューブチャンネルで明かし、やや話題になっている。
(⇒ J-CASTニュース 2024年5月15日記事:人気YouTuber、年金を一度も払ってなかった...差し押さえでパニック 「世間知らずにも程がある」「国民年金知らないってヤバイよ」)
まさか30代になってなお国民年金を知らないなんて無知にもほどがある、世間知らずも度が過ぎる……
という反応が多いようだ。
が、私は思うのである。
なるほど30代になって国民年金なるものがあることを知らない、というのは極端な例だろう。
しかし世の中の人は、「公的保険制度」というものを本当に「知って」いるのだろうか。
それは就職したからこそ(ある程度は)知っているのであり、もし就職することがなければ――
または就職前の学生であれば、ほとんど全く無知のままであるのではないか。
それほど日本の公的保険・公的年金制度は複雑である。
そして悪いことに、公的保険・年金制度なんて、ほとんどの若い人をして「興味を持って調べてみる」なんて気にはさせないものなのだ(笑)
はたしてあなたは学生のとき、国民年金はともかくとして――
●厚生年金保険
●健康保険・国民健康保険
●雇用保険
●労災保険
なんてもののことを、本当に知っていたと言えるだろうか。
雇用保険と労災保険を合わせたものを労働保険と言うだなんて、常識だったか。
私はこの青木歌音という人のことを知らないのだが――性転換した元男性らしい――、30代の今になるまで一般的な会社に在籍したことがない、というのはあり得ることだと思う。
いや、たとえそういうことがあったとしたって、健康保険料や厚生年金保険料というのは「勝手に引かれてるカネ」くらいにしか認識しない人はたくさんいるだろう。
さすがに「税金」を払うのは国民の義務だと知らない人はいないだろうが、この手の「保険料」を払うのが義務だとは認識しない人がいるのは、決して異常なことではないと思える。(「だって税金じゃないんだから」)
これはもう、それこそ憲法を改正して、「国民は納税及び法律で定める保険料(賦課金)の納付の義務を負う」とでも書いた方がいいくらいではなかろうか。
そして私は、もう一つ思うことがある。
それはこの「国民年金の存在すら知らない無知すぎるユーチューバー」が、それを無知だと言っている人の大半よりも、多くのカネを稼いでいるだろうことについてである。
これは、テレビで視聴者に「こいつバカだね~」なんて笑われている「おバカタレント」の方が、そんな視聴者の大半よりよっぽど稼いでいるだろう事実と全く同じ現象だ。
私はこの一事をもってしても、何かについて無知な人を嘲笑するのは控えるべきだと思うものである。
あなたが「そんなことも知らないのか」とバカにしたくなる人が、あなたより現実にずっと多くのカネを――しかもまぎれもなく自分の才覚で――稼いでいる可能性は、常にある。
慎むべし慎むべし……