前回記事がフェミニズムについてであった流れではないが、また同類の話の記事となる。
8月30日、誰でも知っている焼肉チェーン「牛角」は9月2日から12日の間、公式アプリ会員かつ月~木曜日に事前予約した「女性のみ」食べ放題コースを注文したら料金半額となるキャンペーンを行うと発表。
これは牛角をグループとする会社が、9月に開催される『TOKYO GIRLS COLLECTION』へ出展することを記念してのキャンペーンだとのこと。
ところがどっこい、このキャンペーンが「男性差別」だとまたもや炎上したらしいのだ。
(⇒ lasisa 2024年9月1日記事:【SNS発】牛角の“女性半額”キャンペーンは「性差別」? 男性たちから批判が相次いだワケ)
私もそうだが、大半の人はこう思ったろう……
こんなキャンペーンは10年前、いやたった数年前まで、何ということもない「普通の・当たり前の・よくある」タイプのキャンペーンであったはずだ、と。
ほんの少し前まで、こんなキャンペーンはあらゆる企業がやっていた――やっても別におかしくなかった――ことであった。
いわゆる「レディスデー」は日本の風物詩であり、それこそ日本に根付いた「慣習」ですらあったと言えた。
そしてついでに言えば、日本のあらゆる新聞や雑誌が何かと言えば「女性の感性を生かして」という文章を挿入した記事を書いていたのも、立派な慣習レベルにあったと言える。
ところが、昨今のたった数年でそれは「いけないこと」となり、世間から断罪される悪ともなったのだ。
これはもしかしたら(局所的とはいえ)、明治維新以来の価値観の大転回とも言えまいか。
今回の牛角のキャンペーンには「科学的根拠」またの名を「ファクト」があり、それは「従来の食べ放題での注文量が、女性は男性に比べて肉4皿分少ない」というものであった。
しかしそれでも――「そんなものはどうでもよく」と言うべきか――とにもかくにも「男女の間に性別でサービスの差を付ける」こと自体に、断罪の目が向けられる時代へと日本は急転回したのである。
もっとも、牛角は今更このキャンペーンを止めることはできないのかもしれないが……
少なくとも今後は、同種のキャンペーンを行おうとはしないと思われる。
もちろん他の業種の企業だって、あえてこんなことをしようとはしないだろう。
これ即ち、本当の意味でのユニバーサルサービス――サービスに性差を付けない――実現の秋である。
また、人々の価値観のアップデートすべき秋である。
しかしこれほど価値観の転換が急激では、アップデートに手間取る人が大勢いるのも無理はない。
とはいえこの「アップデート遅れ」を克服するのは簡単と言えば簡単で、単に「性別キャンペーンを一切しない」ということだけでいい。
これはむしろ企業にとっては、この手のキャンペーンを企画しないでいいという労力節減にも繋がるだろう。
「勝者には何もやるな」という言葉があるが――
もう時代は、「性については何も語るな」となっているのではないだろうか。