読売新聞の「大手小町」の「発言小町」は、かなり高い頻度で面白い記事や発言・それへの反応を掲載してくれるメディアである。
最近は、「婚約指輪が高すぎるとして彼女に割り勘を提案したら機嫌を損ねた」とする30代公務員男性の投稿が、とても波紋を広げたらしい。
なんでも彼は「結婚式はコロナ禍だからしない代わりに、婚約指輪は欲しい」と彼女に言われて宝石店に行ったところ――
2~3万円程度だと思っていたのに「安くて17万円」と知ってビックリしたらしい。
(⇒ 大手小町 2022年4月16日記事:「婚約指輪って本当に必要?」割り勘を提案した男性の投稿に驚きの声)
これについては、(たぶん女性たちから)呆れた声が多数寄せられた模様。
しかし私は男だからか、この男性の方がよりマトモな精神を持っていると思うのだ。
だいたい「婚約指輪」である。「結婚指輪」とは別なのである。
結婚指輪も買って、なおかつその前に婚約指輪も最低17万円出して買うというのは、ムダではないか。
同じようなことに二重の出費をするものではないか。
現代の若者は「コスパ」を重視するとか、そんなのをこれだけ言われて常識化しているというのに、これは典型的なコスパの悪さ――
と言うより、ハッキリとムダ遣いを強いる「慣習」ではなかろうか。
17万円と言えば、30代公務員の月額「手取り収入」にも匹敵しそうな額である。
それは決して、バカにされるほど安くはない。
昔は婚約指輪とは「給料の3ヶ月分」の値段が相場とされていたらしいが、これもまたハッキリ言えば、その男性の親のカネを当てにした相場であったようにも思える。
(婚約指輪なんて序の口で、まだまだ結婚指輪とか結婚式とかがあったのだ。)
そして、もう一つ思うのが――
これもまたこれだけ連日メディアで「貧困層の苦境」が報じられているというのに、
最低17万円の婚約指輪も割り勘にしようとするなんて呆れたものだ、
とする声が圧倒的だったらしいのは、いったいどういう現象かということだ。
もちろん想定されるのは、この男性の発言に批判を書き込んだ人たちは、貧困層ではないということだろう。
世の中には年収400万円台未満の人がむしろ多数派で、
その人たちは17万円の出費(重ねて言うが、これは出費の序の口である)にたじろがないはずがないのだが――、
そして彼らの相当数は実際に、婚約指輪を贈るなどという慣習を心の中で廃止していると思われるのだが――、
どうも、そういう階層でない人たちが「婚約指輪を割り勘にするなんて」と書き込んでいるようだ。
これもまた、社会の分断の一側面ではあるまいか。
それにしても、もし最低17万円の婚約指輪を割り勘じゃなく買って贈るのがいまだに「常識」なのだとしたら、
よく言われる「結婚はコスパが悪い」と若者は考えている、だから若者は結婚しなくなる、というのは完全に理に叶った筋道だろう。
別に若者じゃなくても、結婚指輪に加えてこんな出費をしないといけないなどと思うと、結婚をためらうのは当然である。
こんな「金食いモンスター」的な慣習を肯定する人や社会に付き合うほど、20代や30代の若者の多数に、そんな余裕はないはずである。
しかしホント、貧困層の人たちは、こういう「論議」を見てどう思っているのだろうか……