2月7日、内閣府は「日本経済2021-22」(ミニ経済白書)を公表した。
それによると、25歳から34歳の年齢幅での世帯類型では、
●所得400万~499万円で「子どものいる夫婦という世帯類型」は、2019年に全体の9.8%(2014年は13.2%)
●所得300万~399万円では5.2%(2014年は10.4%)
であり、ミニ白書は「所得500万円未満では、子どもを持つという選択が難しくなっている」と結論した。
ついでに言えば格差拡大も「順調に」進んでおり、
家計資産で上位10%の世帯が得る利子・配当金収入は、2019年に全体の利子・配当金収入の59.7%(2014年は54.0%)に達したそうである。
(⇒ 2022年2月7日記事:25~34歳で格差拡大 子育て率も低下―ミニ経済白書)
まず、この「所得」というのがクセモノである。
所得は「年収」でも「給与の額面支給額」でもなく、(給与から天引きされる)社会保険料とか基礎控除だとかを除いた後の額だ。
ざっくりだが、所得400~499万円とは年収550~650万円くらい、
所得300万~399万円とは年収400~500万円くらいになるだろうか。
そして今の若者は、「年収400万円台」でも「高収入」と思い始めている、と言われている。
それくらいの「高収入」を得ている中で「子どものいる夫婦という世帯類型」が5%程度、
それよりもっと「裕福な」(若者感覚では「富裕層」とさえ言える)層でも10%を切っているというのは、
これはもう戦慄的な数字である。
ミニ経済白書の結論を言い直せば、「所得500万円未満では(年収600~650万円くらいでは)、子どもを持つという選択が難しくなっている」ということになる。
これはもう明らかに、子どもを持つということは富裕層の贅沢ライフだ、ということにならざるを得ない。
いやはや、日本がこんな世界になってしまうとは――
江戸時代や明治時代、いや昭和30年代の人たちが聞いても、決して信じないだろう。
そしてこれに伴い誰もがナチュラルに思うのは、これからの日本では「非富裕層の絶滅」が起こるだろう、ということだ。
野次馬的に思うことが許されるなら、
いったい西暦2100年の日本はどうなっているのか、
そこにはかつての富裕層の子孫だけが(総人口はもちろん激減しつつも)生き残っているのか、
だとしてもその生き残りの全員が富裕であるなんてことは、あり得ないはずだが……
なんてことを想像して、なんか面白くなってしまう。
そして真面目に思うなら、
もはや「日本人」としての一体感だの連帯感だのは、完全に時代遅れの感覚になってしまったのだなあ、
という感慨が皆さんにも起こってくるだろう。
もう富裕層と非富裕層には、越えがたい断絶ができている。
富裕層は結婚して子どもを持ち、その子どもにたっぷりと資金を投じ、子どもを東京大学卒業生やフィギュアスケート選手とかに仕立てることができる。
一方で非富裕層は、子どもを持つどころか自分の老後の心配だけでカツカツであり――
それどころか、子孫を残すことなく一世代で絶滅する。
しかしそのまさに絶滅しゆく層こそが、富裕層及びその子女の活躍に喝采や「いいね」や投げ銭を送ったりしているというのが、
フランス革命とかロシア革命などという時代とは違う、現代の(ある意味倒錯的な)世情なのだ。
それにしても、年収600万円台でも「子どもを持つことが難しくなっている」という政府機関の認識、
年収600万円台の世帯でも「子どものいる夫婦という類型」が1割にも満たないという実態は、非常に衝撃的である。
ここはやはり、真の富裕層たるもの――
自分の子どもにはぜひとも日本脱出の準備をするよう、今から準備せずんばあらず、ということになるだろうか。