週刊文春では、自民党の京都府連において、国政選挙の自民党候補者が選挙区内の府議や市議に「50万円」を配っていたとの疑惑を報じている。
(⇒ 文春オンライン 2022年2月11日記事:自民党京都府連「選挙買収」疑惑 新たな内部文書と証言「選挙活動を頑張ってもらうため」)
これは2年前に広島県であった、「河井合克行・案里夫妻の選挙買収事件」とほぼ同一の構図なのだろう。
そして、あの事件で真っ先に感じたのと同じことを、今回の疑惑でも感じずにいられない。
それは「この買収額というのは、何て安いんだろう」ということだ。
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50万円というのは、世間の一般人にとって確かにハシタ金ではない。
が、これがワイロだとか買収費だとかいう話になると、誰もが「これは安すぎる」と思うのではなかろうか。
しかもこれは国政選挙で、相手は腐っても地方議会の議員なのだ。
地方議員らもずいぶん安く見積もられたものだと思うが――
しかし逆に考えれば、こういう額の「相場」が決まるまでには、これまでの実績というものを参考にしているはずである。
おそらく地方議員たちは、この程度の額で今まで動いてくれていたのだろう。
それに河井事件で言えば、小なりとはいえ町長である者に対して支払われた額には、「20万円」というのがあった。
これは思わず笑みがこぼれてしまうほど安い金額だと思うが、これに比べれば今回の疑惑は多額ではある。
それにしても、日本は何十年にもわたりデフレで給与も上がっていないと頻りに言われる。
そういう事情は、選挙買収の世界でも全く同じであるかのように見えるところが面白い。
これはたぶん、他の国の選挙買収額とはケタが違うのではあるまいか。
どうやらこんな世界でも、「安い国・ニッポン」はその姿を現しているかのようだ。
このぶんだとメディアで露出の多い有名人(つまり大金持ち)が出馬すれば、地方議員らはアッサリ買収できてしまいそうである。
1人100万円くらい出せば、「今度の候補者はワケが違うぞ」と色めき立ってしまいそうである。
そして、もう一つ思うことがある。
その他の不祥事や批判されるべき行動・言動は何も自民党だけに限った話ではないが、選挙買収事件と言えばほとんど自民党の独壇場である。
しかしそれでも、自民党の権勢が揺らぐことはないのは今までの経験でわかっている。
自民党には、自民党が何をしようと何を言おうと絶対に自民党にしか投票しない「岩盤支持層」がある。
しかもその層は、とても厚い。
これは理屈ではないので、自民党にとって何にも勝る財産である。
しかし逆に言えば、自民党はそういう岩盤支持層のご機嫌を常に伺う「奴隷」なのかもしれない。
そういう意味では自民党そのものを批判するより、自民党支持層を批判した方がはるかにまっとうで、かつ効果があるとも言える。
今の日本の没落と停滞が自民党のせいだとは言い切れないが、しかしいやしくも政権与党であり続けている以上、責任がゼロだともまた言えない。
日本がいつまで経っても「変われない」原因は、いつまでも自民党が政権与党であるからだ――
という意見も、ぜんぜん的外れだとは言えないだろう。
しかし現に、日本国民は自民党を選び続けているのである。
もしそういう状況を変えたいなら、「何があろうと何をしようと」自民党に投票する岩盤支持層を破壊・変心してしまうのが最も効果的……
とは、誰でも考えつくことだ。
しかし、いちおう予言しておく。
今回の疑惑が事実であったとしても、それでも自民党は崩れない。
その岩盤はもしかしたら、あと半世紀くらいは崩れないのかもしれない……