3月19日、劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』公式ツイッターアカウントは、謝罪を発表した。
何に謝罪したかというと、
「作中の女性キャラの中から“理想の花嫁”を選んで投票してください」
という企画についてである。
この理想の花嫁というコンセプトが、「時代遅れ」「古いジェンダー観」だとネット上で批判を受けたらしい。
(⇒ ねとらぼ 2022年3月19日記事:劇場版「名探偵コナン」、“理想の花嫁”投票企画めぐり謝罪 ネットで批判の声)
いま「らしい」と書いたが、しかし「さもありなん」とも言える。
情報感度・ジェンダー感度(?)の高い人には、「嫁」の文字が入っているだけでも頭の中に危険信号が灯ったはずだ。
時代は今、
「いいお嫁さん・奥さんになりそうな人」
「良妻賢母」
といった言い方でさえ危険極まるものになった。
こんなのを用いて許されるのは(スルーされて?)いるのは、ネット上のほぼ男性ユーザーが9割だろうと思われるマンガやゲーム、ラノベくらいか。
そういうフレーズや「爆乳・乳揺れ表現」は、ネット上だけに留まっていればどうも許されているようだ。
しかし公的機関のポスターやメジャーなコンテンツの域になると、たちまち叩かれて謝罪に追い込まれる。
まるで、それらはエロコンテンツと同じ範疇にあるかのようではないか……(笑)
そしてこういう謝罪が積み重ねられるたび、ますます「花嫁」や「女性がウェディングドレスをまとう幸せな結婚」というものは、「使ってはならないタブー」の色を濃くしていく。
一言で言って、花嫁も結婚も、公的な領域では(それを祝福表現することが)オワコンとなっていくのだろう。
これは最近、それこそネット上でよく見かける表現だが――
我々は、価値観をアップデートし続けなければならない。
もはや諸々のキャンペーンで、理想の花嫁を投票するなどということをしてはならない。
もはや女性に、冗談でも「いいお嫁さんになりそう」などと言ってはならない。
女性がウェディングドレスを着て幸せそうにしている姿で、結婚を賛美・祝福してはならない。
(しかしたぶん、同性婚であれば許されそうである。)
もしこのタブーを破れば、恐ろしい結果が待っているだろう。謝罪しなくてはならなくなるだろう。
これが21世紀の(少なくとも2020年代の)、我々の生きる世界の掟であり価値観なのだ。